入院患者ではせん妄がよくみられるが、その疫学はほとんどわかっていない。今回、オーストラリア・オースチン病院のEmmanuel Canet氏らは、病棟患者におけるせん妄患者の人口統計、臨床像、管理、アウトカムがICU患者と異なるかどうかを検証した。その結果、病棟患者のせん妄は、ICU患者のせん妄とは大きく異なり、臨床像は低活動型が優勢で、認知症が先行し、退院時に回復の可能性は低いことが示された。Internal Medicine Journal誌オンライン版2019年3月19日号に掲載。
本研究は、2013年3月~2017年4月にオーストラリアの大学付属病院に入院した患者の後ろ向きコホートで、退院時にICD-10基準を用いてせん妄をコードした。病棟患者100例とICU患者100例のランダムサンプルを調査した。
主な結果は以下のとおり。
・入院患者6万1,032例のうち、2,864人(4.7%)がせん妄にコードされた。
・ICU患者に比べて、病棟患者では年齢が高く(中央値:84歳vs.65歳、p<0.0001)、認知症であることが多く(38% vs.2%、p<0.0001)、手術を受けていた割合は低かった(24 vs.62%、p<0.0001)。
・病棟患者の74%が低活動型せん妄であったのに対し、ICU患者の64%は活動型せん妄であった(p<0.0001)。
・退院時の持続性せん妄は病棟患者で多かった(66% vs.17%、p<0.0001)。
・多変量解析では、年齢と認知症は持続性せん妄を、手術は回復を予測した。
(ケアネット 金沢 浩子)