国立がん研究センター東病院の小川 朝生氏らは、せん妄の高リスク群のスクリーニングおよびその予防のためのシステマティック・マネジメント・プログラムである、多職種せん妄対応(DELirium Team Approach:DELTA)プログラムが、がん入院患者のケアの質を向上させるかについて検討を行った。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2018年7月17日号の報告。
特別ながん治療を実施可能な日本の医療機関において、DELTAプログラム介入前の期間(2012年10月~2013年3月)と介入後の期間(2013年10月~2014年3月)を比較する、前後比較レトロスペクティブ研究を実施した。評価対象となった入院患者数は、介入前4,180例、介入後3,797例であった。
主な結果は以下のとおり。
・せん妄の発生率は、プログラム介入前の7.1%から介入後4.3%に低下した(OR:0.52、95%CI:0.42~0.64)。
・転倒・転落や自己抜管を含む有害事象の発生率も、3.5%から2.6%に低下した(OR:0.71、95%CI:0.54~0.92)。
・ベンゾジアゼピン処方の減少(OR:0.79、95%CI:0.71~0.87)、退院時のADLレベルの上昇(OR:1.94、95%CI:1.11~3.38)、在院期間の短縮(リスク比:0.90、95%CI:0.90~0.90)において有意な差が認められた。
著者らは「せん妄のためのDELTAプログラムは、せん妄の発生率を低下させ、いくつかの臨床的アウトカムを改善した。シンプルかつ費用対効果の優れたDELTAプログラムは、多忙な病棟においても日常的なケアとして実行可能である」としている。
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(鷹野 敦夫)