近年、人間とコミュニケーションを交わし生活をサポートするソーシャルロボットの開発が進んでいる。ソーシャルロボットは医療業界ではどのような活躍が期待できるであろうか。信州大学のTakaeda Kana氏らは、高齢者の認知機能検査へのアクセスを改善するため、ロボットを使った音声による検査の信頼性と受容性を検討した。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年3月18日号に掲載。
本研究ではソーシャルロボットを用いて、老人ホームとデイケア施設から募集された参加者に対して電話を通した認知機能スクリーニングツールであるTelephone Interview for Cognitive Status日本語版を実施した。ロボットの会話や意思はあらかじめプログラムされており、次の質問へ進むタイミングの制御や参加者の反応の記録は研究者の手によって行われた。本研究では、認知機能検査の内的整合性、代替形式法による信頼性(実験1)、再検査法による信頼性(実験2)を検証した。また、実験2において、問診票を用いた検査の受容性の検証も行われた。
主な結果は以下のとおり。
・66例(平均年齢81.2±5.8歳)が実験1に参加し、検査の内的整合性を評価するクロンバックのα係数は0.691、代替形式法の信頼性係数は0.728であった。
・実験1の参加者のうち40例(平均年齢82.0±5.4歳)が実験2にも参加し、再検査法の信頼性係数は0.818であった。
・質問票によると、半数以上の検査参加者が、認知機能の低下を測定するためにロボット版の検査を使いたい(あるいは非常に使いたい)と回答した。
著者らは、「もし研究者によって実行されている部分についても自動化に成功すれば、ロボットによる認知機能検査は地域在住高齢者にとって十分な信頼性と受容性を持ちえるだろう」としている。
(ケアネット 生島 智樹)