抗炎症効果が期待できる高齢者に適した食事療法とは?

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/18

 

 血糖値低下や体重減少を目的とした食事療法は数多い。その中で、最近注目を集めているトピックスが「抗炎症」。慢性炎症は生活習慣病などにつながる可能性があり、炎症を引き起こす栄養素を避け、炎症を抑える(抗炎症)作用を持つ栄養素を取る、という考え方だ。

 2019年6月に行われた第19回日本抗加齢医学会総会において「抗炎症Diet」と題するシンポジウムが行われ、抗炎症作用を踏まえた食事療法として、山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター センター長)が糖質制限食、古家 大祐氏(金沢医科大学医学部 教授)が低タンパク食を、最新の研究結果と共に紹介した。

糖質制限の抗炎症作用は検証できる段階にはない

 山田氏は、現時点で推奨すべきは糖質制限食という考えを示した。

 その理由として、

・カロリー制限食は、継続がきわめて困難かつ有効性がない(2型糖尿病発症予防のための介入試験[J-DOIT3]1)において調整後に全死因死亡や主要心血管イベントの発生率を有意に低下させることが実証されたが、介入から3年後には強化治療群・通常治療群ともにBMIが増加していた)。また、フレイルやサルコペニアにつながるリスクがある
・タンパク制限食もフレイルやサルコペニアのリスクがあり、とくに筋肉の落ちやすい高齢者には不適という点を挙げた。

 糖質制限食は、糖尿病患者の血糖値改善効果の研究ですでに多くのエビデンスがあり、これらの無作為化比較試験をメタ解析した9件の研究においても、血糖(HbA1c)・体重・脂質すべての数値がほかの食事療法より改善した、という結果を紹介した。一方、これらのメタ解析においてLDL-C値は全般的に改善効果が低く、極端な糖質制限はコレステロール値に悪影響を与える可能性があることに注意が必要とした。そして、注目の抗炎症作用については、糖質制限食とCRP値との関連を調べた研究が数件あるものの明確な結果は得られず、期待は持てるもののまだ検証できる段階にはない、と述べた。

いわゆる地中海食に腎保護作用と抗加齢につながる可能性

 続いて、古家氏が低タンパク食とメタボリックヘルスとの関連を調査した結果を発表した。ショウジョウバエを使ってカロリーと寿命の関係をみた過去の研究2)では、タンパク質制限は、カロリー制限と同等の延命効果が認められた。これを踏まえ、2型糖尿病モデルラットを使い、低タンパク食と腎障害・メタボリックヘルス改善との関連についての調査を実施。24週齢で腎障害が出ているラットを通常食群(タンパク質23.84%、脂質18.80%、炭水化物59.36%、エネルギー3.55kcal/g)と低タンパク食群(タンパク質5.77%、脂質16.48%、炭水化物77.75%、エネルギー3.54kcal/g)に割り付け、20週間の介入後に各数値の変化をみた。

 結果として、低タンパク食群は血糖(HbA1c)・脂質が低下し、コレステロール値では有意差はなかったものの低下した。古家氏は「低タンパク食には腎保護効果とメタボリックヘルスの改善に関連が強く、寿命延伸につながる期待がもてる」と述べた。

 また、低タンパク食は長期効果を疑問視する声やフレイルやサルコペニアを招くリスクが指摘されていることから、低タンパク食の量とともに「質」についても検討を行った。赤肉を多く取ると末期腎不全・腎死のリスクが高まり、赤肉をほかのタンパク質(鶏肉・魚・卵・豆類など)に換えることでリスクが減ったことから、「赤肉を減らし、魚や植物性タンパク質を多く取る、いわゆる地中海食が腎保護作用と抗加齢につながる可能性がある」とまとめた。

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(ケアネット 杉崎 真名)