2020年2月21日、マイランEPD合同会社は4月の入園入学シーズンに合わせ、医師・教職員・保護者の立場から食物アレルギーを持つ子供を守るための知識を学ぶための「アナフィラキシー啓発メディアセミナー」を開催、この中でアレルギー専門医の佐藤 さくら氏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター病態総合研究部 病因病態研究室長)が食物アレルギーの病態や最新の関連ガイドラインについて講演を行った。
食物アレルギーの子供は年々増えている。東京都が3歳児健診時に行った調査によると「子供がアレルギーを持つ」と答えた保護者は、1999年には7.1%だったが2014年には16.1%まで増加しており、保育園・幼稚園や学校側は、給食を筆頭に、調理実習、修学旅行などの校外授業、小麦粉粘土の使用などのさまざまな面で対応が必要となっている。
死亡事故を機にガイドラインを整備
こうした施設側の対応は、学校では「
学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(日本学校保健会・2020年3月改訂予定)、保育園では「
保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(厚生労働省)が基本指針となる。2012年、東京都調布市の小学校で牛乳アレルギーを持つ女児が給食で提供された「チーズ入りチヂミ」を食べ、アナフィラキシーショックを起こして亡くなった、という不幸な事故を機にガイドラインの整備が進んだ。
両ガイドラインでは、食物アレルギー対応策の3つの柱として以下を挙げている。
1)正しい理解と正確な情報の把握
2)日常の取り組みと事故予防
3)緊急時の対応
この3点の実践でカギとなるのが、アレルギーの有無やその症状をまとめた「学校生活管理指導表」だ。施設側に特別な配慮を求める場合、主治医が本表に病歴や治療歴を記載し、それを基に保護者と施設側が事前に必要な対策を話し合う、という使い方をする。従来から同様の調査表・アンケートはあったものの、施設によりフォーマットが異なり、設問が医療的に不適なものが含まれていたのを、ガイドラインによって統一した。
「よくあるのが、主治医はアレルギーが確定した食品だけを記載したものの、家庭では用心してそれ以外にも食べさせていない食物がある、というケース。こうしたものを洗い出し、入園入学前に食べられるかどうかを試しておくことが大切」(佐藤氏)。「学校生活管理指導表」には、このほか症状や出た場合の対応法、連絡先、アドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン
®など)を所持する場合は、その使用の判断について確認する項目などが含まれる。
佐藤氏は、保護者がインターネット等でアレルギーに関する不確かな情報に触れる機会が多いことも挙げ、確実な情報源として以下を紹介した。
・
アレルギーポータル(日本アレルギー学会)
症状や治療方法、相談できる専門医の情報を網羅。非常時や災害時の対応方法も集約されている。
・
マイエピ(マイランEPD合同会社)
佐藤氏が監修したアレルギー児を持つ保護者、関係者向けのアプリ。アレルギーの症状や検査の記録を写真とともに記録できるノート機能のほか、アナフィラキシー発現時におけるエピペン
®の投与手順や、使用期限前にお知らせする、「重要なお知らせ通知プログラム」などがある。
学校と病院が連携して対策進める
続いて、廣瀬 郷氏(調布市教育委員会 教育部学務課長補佐)が、教育現場で行われているアレルギー対策について講演した。マニュアルの整備や就学前の情報収集のほか、近隣の慈恵医科大学附属第三病院と連携して教員が判断に迷った場合に相談するホットラインを開設したこと、病院側の提案により緊急時を想定したシミュレーション訓練を行っていることなどを紹介したうえで、「調布のアナフィラキシーショックの死亡事故から7年。事故を風化させないように引き続き対策に取り組んでいく」と述べた。
■関連するガイドライン・資料
学校給食における食物アレルギー対応について(文部科学省)
学校給食における食物アレルギー対応指針(文部科学省)
保育所におけるアレルギー対応ガイドライン2019年改訂版(厚生労働省)
アナフィラキシーガイドライン(日本アレルギー学会)
(ケアネット 杉崎 真名)