ER+/HER2-乳がんのアジュバントへのS-1上乗せ効果、リスク別解析(POTENT)/ASCO2020

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/09

 

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果は、再発リスクが中〜高リスクの患者で大きく、5年無浸潤疾患生存率(iDFS)で約7〜8%の上乗せ効果が得られたことが、第III相POTENT試験の探索的解析で報告された。京都大学の高田 正泰氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)のポスターセッションで発表した。

ER陽性HER2陰性乳がんのアジュバントへのS-1追加により5年iDFSが改善

 POTENT試験は医師主導による国内多施設共同非盲検無作為化比較第III相試験である。2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウムにおいて、ER陽性HER2陰性乳がんのアジュバントで標準的ホルモン療法にS-1を追加することにより5年iDFSを改善したことを報告している。今回は、S-1の追加投与に適した患者を特定するために、被験者を再発リスク(複合リスク)スコアで分類しS-1上乗せによるiDFSの改善効果を評価した。

・対象:Stage I~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者(リンパ節転移状況は問わず)1,930例
・試験群:S-1(1日2回経口、3週ごと)+標準的ホルモン療法(S-1併用群)957例
・対照群:標準的ホルモン療法 973例
・主要評価項目:iDFS

 1930例中、データ欠損のない1,897例について解析された。各患者の再発リスク(複合リスク)は、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、グレード、ER発現、Ki-67発現レベルを組み込んだCoxモデルで決定した。また、複合リスクスコアにより低リスク群(下位四分位数以下、677例)、中リスク群(四分位範囲、767例)、高リスク群(上位四分位数超、453例)に分け、各群におけるS-1の上乗せ効果を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・5年iDFSは、複合リスクスコアによる低リスク群、中リスク群、高リスク群の順に、標準的ホルモン療法群が91.6%、82.0%、67.2%、S-1併用群が92.5%、88.7%、75.3%であった。
・S-1追加によるiDFSの差は、低リスク群、中リスク群、高リスク群の順に0.9%、6.7%、8.1%で、ハザード比はそれぞれ0.86(95%CI:0.45~1.63、p=0.642)、0.51(95%CI:0.34~0.78、p=0.001)、0.71(95%CI:0.49~1.02、p=0.064)であった。

 主任研究者の戸井 雅和氏(京都大学)は、「参加研究者全体も高い興味を持って取り組んでおり、重要な知見と捉えている」とコメントしている。

(ケアネット 金沢 浩子)