岩手医科大学の赤坂 博氏らは、軽度認知障害(MCI)や初期アルツハイマー病(AD)などの早期認知障害患者のスクリーニングツールとして、老研式活動能力指標(Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology index of competence:TMIG-IC)を用いて評価した日常生活の機能活動の臨床的有用性について検証を行った。日本老年医学会雑誌2020年号の報告。
対象は、クリニックから連続登録を行ったMCI(39例)とAD患者(FAST分類4:50例、FAST分類5以上:19例)およびコミュニティベースコホートより抽出した健康対照者(NC群:187例)。すべての対象者およびその家族に対し、TMIG-ICを用いた調査を行った。合計スコアおよびサブスケールスコアについて、群間比較を行った。また、MCIとADの診断精度の検討も行った。
主な結果は以下のとおり。
・家族より報告されたスコアは、NC群と比較し、MCI群、AD群の順で有意な低下が認められた。患者より報告されたスコアでは、顕著な差は認められなかった。
・MCIとADの診断において、家族より報告された合計スコアは、感度85.7%、特異性90.9%で判別できた(AUC:0.913)。
・MCIのみの判別では、精度の低下が認められた(AUC:0.787)。
・患者と家族の回答が不一致であった項目のみを指標とした場合、AUCは0.847となった。
著者らは「TMIG-ICは、初期ADを含むADの重症度を評価するために有用なツールである。家族から報告されたスコアを用いることによりMCIおよびADの判別を十分な精度で実施できる。MCIの判別では、患者と家族の評価の不一致数で精度が高くなる」としている。
(鷹野 敦夫)