小細胞肺がんの脳転移に対する標準治療は全脳照射(WBRT)なのか。ほとんどの限局性脳転移について、定位放射線治療(SRS)が推奨されているが、SRSに関するデータは不足している。米国・コロラド大学のChad G. Rusthoven氏らは、初回治療としてのSRS(WBRT既往なし/予防的全脳照射なし)とWBRTを比較する国際多施設コホート研究「FIRE-SCLC試験」を行い、SRSはWBRTと比較して中枢神経系進行までの時間(TTCP)が短いが、全生存(OS)期間は有意に延長したことなどを明らかにした。著者は、「今回の研究結果は、TTCPが短いがOSは短縮しないなど、初回SRS単独治療の主な一長一短が、SRSに関してすでに観察されていることと同様であることを示すものであった」と述べている。JAMA Oncology誌2020年6月4日号掲載の報告。
FIRE-SCLC(First-line Radiosurgery for Small-Cell Lung Cancer)試験は、欧米および日本の28施設で実施された。研究グループは、小細胞肺がんの脳転移に対する初回治療でのSRSの治療成績をWBRTと比較する目的で、2017年10月26日~2019年8月15日にデータを収集し、2019年8月16日~11月6日に解析した。
主要評価項目は、SRS後のOS、TTCP、および中枢神経系の無増悪生存(CNS-PFS)期間で、これらを評価した後、傾向スコアマッチング法およびPS、脳転移数、同時性、年齢、性別および治療年で補正した多変量解析によりWBRTと比較した。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は、1994~2018年にSRSを受けた合計710例(年齢中央値68.5歳、男性531例[74.8%])であった。
・OS中央値は8.5ヵ月、TTCP中央値は8.1ヵ月、CNS-PFS中央値は5.0ヵ月であった。
・治療が行われた脳転移数別のOS中央値は、1個の場合11.0ヵ月、2~4個8.7ヵ月、5~10個8.0ヵ月、11個以上5.5ヵ月であった。
・傾向スコアマッチング法でSRSとWBRTを比較した結果、WBRTはTTCPの改善(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.26~0.55、p<0.001)が認められた一方、OS(中央値:SRS群6.5ヵ月[95%CI:5.5~8.0]vs.WBRT群5.2ヵ月[95%CI:4.4~6.7]、p=0.003)およびCNS-PFS(中央値:SRS群4.0ヵ月vs.WBRT群3.8ヵ月、p=0.79)の改善は認められなかった。
・SRSとWBRTを比較する多変量解析(頭蓋外転移および頭蓋外病勢コントロール状況に関するサブグループ解析を含む)も、同様の結果であった。
(ケアネット)