併存症のある高齢乳がん患者、補助化学療法と生存は関連するか/JAMA Oncol

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/04

 

 複数の併存疾患を有する高齢乳がん患者において、補助化学療法は生存と関連するのか。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNina Tamirisa氏らは、併存疾患を有する70歳以上の乳がん患者を対象に、補助化学療法と生存の関連を評価する、後ろ向きの大規模コホート研究を実施した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月16日号に掲載の報告より。

 対象は米国国立がんデータベースに登録された、70歳以上のエストロゲン受容体陽性、ERBB2陰性、Charlson/Deyo併存疾患指数が2または3の乳がん患者。2010年1月1日~2014年12月31日にリンパ節転移陽性乳がんの手術を受けていた。

 年齢、併存症スコア、施設タイプ、施設の場所、病理学的TおよびN分類、補助内分泌療法と放射線療法の有無に基づく傾向スコアを用いた、二重ロバストCox比例ハザード回帰モデルにより、補助化学療法と全生存との関連が推定された。データ分析期間は、2018年12月13日~2020年4月28日。

 主な結果は以下のとおり。

・データベースに含まれる計244万5,870例のうち、1,592例(平均年齢:77.5[SD 5.5]歳、女性:96.9%)が包含基準を満たした。
・これらの患者のうち、350例(22.0%)で化学療法が実施され、1,242例(78.0%)では実施されなかった。
・化学療法グループと比較して、化学療法なしのグループは若く(平均年齢:74 vs.78歳、p<0.001)、原発腫瘍が大きく(pT3/T4:72例[20.6%] vs.182例 [14.7%]、p = 0.005)、リンパ節転移数が多かった(pN3:75例[21.4%]vs.81例[6.5%]、pN1:182例[52.0%]vs.936例[75.4%]、p<0.001)。
・化学療法グループでより多く、他の術後療法も行われていた:内分泌療法(309例 [88.3%] vs.1,025例[82.5%]、p=0.01)、放射線療法(236例[67.4%]vs.540例[43.5%]、p<0.001)。
・追跡期間中央値43.1ヵ月(95%CI:39.6~46.5ヵ月)において、化学療法グループと化学療法なしのグループの全生存期間中央値に、統計的有意差はみられなかった(78.9ヵ月[95%CI:78.9ヵ月~NR]vs.62.7ヵ月[95%CI:56.2ヵ月~NR]、p = 0.13)。
・潜在的な交絡因子で調整後、化学療法の実施と生存率改善が関連した(ハザード比:0.67、95%CI:0.48~0.93、p=0.02)。

 著者らは、複数の併存症を有するリンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性の高齢乳がん患者において、化学療法の実施が全生存期間の改善に関連することが明らかになったとし、選択バイアスによる調整後これらの結果が得られたことからは、補助化学療法から治療効果が得られる可能性が高い患者を医師が慎重に選択したことが示唆されていると結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)