日本婦人科腫瘍学会は、「卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2020年版」を8月31日に発刊した。5年ぶりの改訂となる2020年版には、妊孕性温存や漿液性卵管上皮内癌(STIC:Serous tubal intraepithelial carcinoma)、分子標的薬、PARP阻害薬などに関する新たな情報も追加され、手術療法、薬物療法のクリニカルクエスチョン(CQ)が大幅に更新された。そのほか、推奨の強さの表記は「推奨する」「提案する」に一新され、臨床現場ですぐに役立つ治療フローチャートや全45項のCQが収載されている。
三上 幹氏(日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会委員長)は本書の序文において、「日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会が2002年に設置され、初版の『卵巣がん治療ガイドライン2004年版』が発刊されて以降、子宮頸癌治療、外陰がん・膣がん治療など、さまざまなガイドラインが臨床の現場で活用されている。今回、『卵巣がん2015年版(第4版)』を5年の歳月を経て、名前を変更し『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版(第5版)』の発刊に至った。最初のガイドライン発刊より16年が経過しており、とても感慨深く感じる」とコメント。
さらに、「今回の改訂では、“Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017”にできる限り準拠して行うことを目標にした。そのポイントは、(1)作成委員として医師以外に看護師、薬剤師、患者、一般の方(女性・男性)が参加、(2)CQにPICO形式*を導入したこと、(3)推奨グレード・エビデンスの表現法を変更したこと、(4)エビデンス総体の考え方を導入したこと、(5)参考文献は研究デザインで分類したこと、(6)一部のCQについてSystematic Reviewを施行したこと、(7)各CQ・推奨について投票を行い、合意率を推奨の後に記載したこと」と述べている。
*:P(patient・対象となる患者集団)、 I(Intervention・治療や検査などの介入 )、C(Comparison・比較となる介入)、 O(Outcome・介入による影響)
主な記載内容は以下のとおり。
フローチャート1:卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の治療
フローチャート2:再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の治療
フローチャート3:上皮性境界悪性卵巣腫瘍の治療
フローチャート4:悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療
フローチャート5:性索間質性腫瘍の治療
本ガイドラインにおける基本事項
I 進行期分類
・第1章 ガイドライン総説
・第2章 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌
・第3章 再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌
・第4章 上皮性境界悪性腫瘍
・第5章 胚細胞腫瘍
・第6章 性索間質性腫瘍
・第7章 資料集
II 略語一覧
III 日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会業績
IV 既刊の序文・委員一覧
(ケアネット 土井 舞子)