新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床経過に対するスタチンの影響については、相反する報告・見解が示されている。炎症反応の進行や肺損傷に対し保護的な役割を果たすというものと、逆に重症化やサイトカインストームに寄与しうるというものである。マレーシア・International Medical UniversityのChia Siang Kow氏らは、COVID-19の臨床転帰に対するスタチンの影響に関する4報の後ろ向き研究結果を用いてメタ解析を行った。American Journal of Cardiology誌オンライン版2020年8月12日号のCORRESPONDENCEへの報告より。
スタチン使用者で新型コロナによる死亡または重症化のリスクが大幅に減少
2020年7月27日までに、スタチン使用者と非使用者との間でCOVID-19の重症度および/または死亡のリスクを評価した研究について、PubMed、Google Scholar、およびmedRxivデータベースを検索・抽出した。観察研究の質は、Newcastle-Ottawa Scale13を用いて評価された。
新型コロナに対するスタチンの影響を解析した主な結果は以下のとおり。
・計8,990例のCOVID-19患者を対象とした4つの研究(中国2報、米国、イタリア)が抽出された。
・プール解析の結果、スタチン非使用者と比較して、スタチン使用者では死亡または重症化のリスクが大幅に減少した(プール解析でのハザード比:0.70、95%信頼区間:0.53~0.94)。
著者らは、本解析において、COVID-19患者におけるスタチン使用による有害性は示唆されなかったとし、中強度から高強度のスタチン療法が新型コロナに効果的である可能性が示されたとしている。そのうえで、無作為化比較試験による評価が必要としている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)