“みえない”健康課題に対して、どのように向き合っていくか?

提供元:ケアネット

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公開日:2020/11/30

 

 2020年11月18日(水)に日本イーライリリー株式会社主催のオンラインプレスセミナーが開催され、“みえない多様性”について、社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 脳神経内科部長・頭痛センター長の竹島 多賀夫氏が、職場に与える影響を片頭痛の事例から語った。また、日本イーライリリー コーポレート・アフェアーズ本部の山縣 実句氏からは、「“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクト」の紹介があった。

 竹島氏は、「片頭痛など、みえない健康課題を抱える人を理解し、職場環境の整備や発作時に配慮することが大切。仕事の生産性が向上するだけでなく、患者さんの人生にも良い影響を及ぼすだろう」と述べた。

 「健康で働きやすい職場」の環境づくりを考えるうえで、このような啓発活動は重要であり、今後も広がっていくと考える。

みえない健康課題の代表「片頭痛」が日常生活や職場に与える影響

 片頭痛は女性に多く、症状として頭痛以外にも疲労や感覚過敏、光過敏などが生じることから、患者のQOLを著しく低下させ、日常生活に支障を来す。日常生活への支障を重症度で表すと、活動性精神病や認知症、四肢麻痺と同レベルの、重症度が一番高いところに位置する。片頭痛の患者では、日常生活や仕事への支障による生産性低下の割合も多くみられている。

片頭痛を我慢して働く人は90%以上

 片頭痛の症状が仕事に及ぼす影響に関して、日本イーライリリーが独自で実施したインターネット調査では、疾患のつらさを我慢しながら働く人は90%以上いることがわかった。症状を我慢して周囲に伝達できない理由として、「伝える必要がないと思ったから」が49%、「伝える機会がなかったから」が36%と、1人で「つらさ」と向き合っている人が多いことも確認された。みえない「つらさ」を抱えながら働く人に、伝える機会やきっかけが必要とされている。

“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクトの発足

 このようなことから、片頭痛をはじめ、さまざまな健康課題による痛みなどの症状や、周囲に理解されないことにより生じる当事者の「不安、支障、働きづらさ」は、“みえない多様性”と定義された。この“みえない多様性”があることを知り、当事者と周囲の人との相互理解を深めることで、一人ひとりが行動を変え、誰もが働きやすい環境をつくることを目的として、同社は健康経営に取り組む企業とともに「“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクト」を発足させた。

社員のみえない健康課題を理解するためのツール

 “みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクトでは、健康経営に関心がある人、管理職、健康課題を抱える当事者を対象とした、みえない多様性に関する解説・事例紹介・カードゲームを使用して議論しながら理解を深めていく啓発ツールが開発された。啓発ツールを使って片頭痛のみならず、さまざまな健康課題を抱える人にとって、働きやすい職場環境が社会全体に広がることが期待されている。

まとめ

 “みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクトの活動が社会全体に広がっていくことで、健康に悩みを抱えていても、周囲の人へ伝えてよい、我慢しなくても大丈夫であるという安心感が生まれ、働くことに対して価値を見いだすことができるのではないだろうか。それが生産性の向上につながり、より良い社会の実現に必要であると考える。

※インターネット調査の概要
・調査名:「片頭痛、腰痛、およびアレルギー性鼻炎の患者さんの症状と仕事への影響に関するインターネット調査」(実施:日本イーライリリー株式会社)
・調査期間:2020年10月5日~15日
・調査手法:インターネット調査
・調査地域:全国
・調査対象と回収サンプルサイズ:合計674件(片頭痛:168件、腰痛:169件、アレルギー性鼻炎:165件)

(ケアネット 高津 優人)