小児がん患者の悪心嘔吐予防に対するパロノセトロンの有効性/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/23

 

 小児がん患者での化学療法に伴う悪心嘔吐(CINV)は、催吐性の抗がん剤治療を受けた約70%発現することが報告されているが、研究結果は少ない。第2世代5-HT3受容体拮抗薬パロノセトロンは、とくに遅発期(抗がん剤投与後 24〜120時間)におけるCINV抑制効果が確認されており、本邦では成人での使用にて承認されているが、小児のCINV予防の制吐薬としては承認されていない。そこで、わが国の小児がん患者を対象にパロノセトロンの有効性と安全性を検討する第III相試験が実施され、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)において、九州大学病院の古賀 友紀氏がその結果を発表した。

・対象:生後28日~18歳の高度または中等度催吐性抗がん剤を含む初回化学療法が計画または実施されている小児がん患者
・介入:抗がん剤投与開始30分~直前にパロノセトロン(PALO)20μg/kg(最大1.5mg)とデキサメタゾン(DEX)を投与。DEXは2および3日目も投与
・評価項目:化学療法1サイクル目における全期間(抗がん剤投与後0~120時間)の嘔吐完全抑制率(嘔吐・空嘔吐の発現がなく、制吐処置を実施していない状態、以下CR)率。CR率の閾値は事前に30%に設定

 主な結果は以下のとおり。

・2016年12月~2019年6月に60例が登録され、PALOが投与された58例にて有効性、安全性が評価された。
・全期間CR率は58.6%(95%CI:44.9~71.4、p<0.0001)であった。95%信頼区間の下限が事前に設定した閾値を上回ったことから、本試験の主要評価項目は達成された。
・急性期(0~24時間)CR率は72.4%、遅発期(24~120時間)CR率は63.8%であった。
・PALOによる副作用は2例(3.4%)に認められたが、いずれも試験期間中に回復しており、問題となる副作用は認められなかった。また重篤な副作用や治療関連死亡はなかった。

 本試験より、高度または中等度催吐性の抗がん剤が投与される小児がん患者(生後28日~18歳)におけるパロノセトロンのCINV抑制予防効果と安全性が確認された。

(ケアネット 細田 雅之)