小児期の低血圧とADHDとの関連~10年間のフォローアップ調査

提供元:ケアネット

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公開日:2021/04/29

 

 注意欠如多動症(ADHD)は、心理社会的障害に関連する小児および青年期の最も一般的な行動障害の1つである。ADHDの基本的な病態生理は、少なくとも部分的に自律神経の覚醒プロセスの欠損と関連している可能性があり、疾患の中核症状に影響を及ぼすだけでなく、覚醒調整の変化に伴い血圧の変動を引き起こす可能性がある。ドイツ・ゲッティンゲン大学医療センターのJan Schulz氏らは、ADHD患者の小児および青年~成人期の長期的な血圧変動を調査した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年2月14日号の報告。

 ドイツの小児および青年の健康調査(KiGGS)のデータを用いて、10年にわたるフォローアップを行った。ベースライン時に7~17歳の小児および青年でADHD群1,219例(11.1%)および対照群9,741例(88.9%)を対象に、血圧記録の比較を行った。両群1,190例ずつの比較を行うため、傾向スコアマッチングを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・マッチしたサンプルによる結果では、ADHD患者のベースライン時の収縮期血圧(107.6±10.7mmHg vs.109.5±10.9mmHg、p<0.001、Cohen's d=0.17)および拡張期血圧(64.6±7.5mmHg vs.65.8±7.4mmHg、p<0.001、Cohen's d=0.16)は、有意に低いことが明らかとなった。
・より厳密に診断したADHD群272例を用いた感度分析では、有意なままであり、Cohen's dは少し高くなっていた(収縮期血圧:Cohen's d=0.25、拡張期血圧:Cohen's d=0.27)。
・より厳密に診断したADHD群とマッチした対照群を用いたサブグループ解析では、10年間のフォローアップ後に血圧低下は持続しておらず、ADHDの有無にかかわらず収縮期血圧(123.4±10.65mmHg vs.123.78±11.1mmHg、p=0.675、Cohen's d=0.15)および拡張期血圧(71.86±6.84mmHg vs.71.85±7.06mmHg、p=0.992、Cohen's d=0.16)は類似していた。

 著者らは「ADHDの小児および青年は、対照群と比較し、ベースライン時の血圧が有意に低かったが、10年後のフォローアップでは差が認められなかった。青年期から成人初期における血圧の変化は、自律神経の覚醒状態の変化を反映している可能性があり、おそらくADHDの病態生理を調整していると考えられる」としている。

(鷹野 敦夫)

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