バーチャルリアリティ(VR)介入は、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患の患者にとって、革新的かつ効果的なリハビリテーションツールとして期待されている。中国・南京医科大学のShizhe Zhu氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における認知機能や運動機能に対するVR介入の有効性を評価するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年5月5日号の報告。
2020年4月までに公表された関連文献を、7つのデータベースよりシステマティックに検索した。60歳以上のMCIまたは認知症の患者を対象としてVR介入の検討を行ったランダム化比較試験を含めた。主要アウトカムは、全体的な認知機能、包括的な認知機能、注意、実行機能、記憶、視空間認知能力を含む認知機能とした。副次的アウトカムは、全体的な運動機能、バランス、歩行を含む運動能力とした。不均一性の潜在的な因子を特定するため、研究の特徴に基づいてサブグループ解析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・分析には、11研究、359例が含まれた。
・主要アウトカムの解析では、以下の認知機能に対するVR介入の有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。
●全体的な認知機能:g=0.45、95%信頼区間(CI):0.31~0.59、p<0.001
●注意/実行機能:g=0.49、95%CI:0.26~0.72、p<0.001
●記憶:g=0.57、95%CI:0.29~0.85、p<0.001
●包括的な認知機能:g=0.32、95%CI:0.06~0.58、p=0.02
・副次的アウトカムの解析では、全体的な運動機能に対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:小)。
●全体的な運動機能:g=0.28、95%CI:0.05~0.51、p=0.018
・バランスのエフェクトサイズに対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。
●バランス:g=0.43、95%CI:0.06~0.80、p=0.02
・視空間認知能力と歩行のエフェクトサイズには、統計学的に有意な影響は認められなかった。
・サブグループ解析では、VRのイマージョンタイプと診断名において不均一性が検出された。
著者らは「VR介入は、MCIまたは認知症高齢者の認知機能および運動機能を改善するために有用な非薬理学的アプローチであることが示唆された。とくに、注意/実行機能、記憶、全体的な認知機能、バランスに対する有意な効果が認められた。一方、視空間認知能力や歩行パフォーマンスに対する効果は認められなかった」としている。
(鷹野 敦夫)