コロナ禍における診療所経営の難しさについてメディアで話題になっているが、実態はどのような状況にあり、開業医の年収への影響や、とくに影響が大きい科目・地域等の傾向にはどうなっているのか。2021年7月に会員開業医(経営層)1,000人を対象にアンケートを行った。
2019年(コロナ前)と2020年(コロナ禍)の年収(役員報酬・所得)を聞いたところ、2019年では1,600万円未満とした回答者は全体の48%と半数未満に留まっていたが、2020年には56%と8ポイント上昇し、一部の層がマイナスの影響を受けたことがわかった。
2019年から2020年にかけての年収の変化について、耳鼻咽喉科の55%、小児科の40%が「下がった」と回答した一方で、糖尿病・代謝・分泌科は「下がった」は8%、泌尿器科も同11%と低く、逆に「上がった」との回答が17%と他科と比べて高いなど、科目による違いも大きいことがわかった。
エリア別での分析では、「大きな差がない」という結果となった。度重なる緊急事態宣言・まん延防止等重点措置がとられた1都3県・大阪・兵庫・京都・愛知エリアでは収入減となった診療所が多いとの予測もあったが、実際には「年収が下がった」との回答者の割合は他エリアと同じ26%、逆に「年収が上がった」と回答者の割合が他エリアよりも高い5%という結果となった。都心では在宅診療に乗り出したり、検査業務を拡充したり、他医療機関でアルバイトをするなど、柔軟にコロナに対応した経営を行った診療所が多かったことが推察される。
「直近の診療所経営で行ったこと」を聞いたところ、収入増の回答者からは「運営する医院以外でアルバイト勤務を始めた」「従業員数を減らした」等の対策を行い、利益を確保したケースが見られた。
最後に、今後の運営方針について確認したところ、「現状維持」との回答者が87%と大半を占めた。「経営を縮小する」が8%、「拡大する」が3%、「売却や閉院を検討する」が1%という結果となり、コロナが診療所経営に与えた影響は大きかったものの、既に大きな波は乗り越え、来年度にかけては通常の経営状況に戻ると予測する回答者が多いようだ。
アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。
『開業医の年収、コロナ前後でどう変化した?』
(ケアネット 杉崎 真名)