運動は、身体機能や免疫力に良い影響をもたらす可能性がある。中国・四川大学のShanshan Li氏らは、原発性不眠症患者に対する運動介入の効果をシステマティックに評価し、メタ解析に基づいて、原発性不眠症患者の睡眠の質を改善するうえで役立つ運動の推奨事項を作成した。The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness誌2021年6月号の報告。
2019年10月までに公表された原発性不眠症に対する運動介入の影響を調査したランダム化比較試験をCNKI、VIP、Wanfang、Web of Science、SpringerLink、EBSCO、PubMed、Cochrane Library、Embaseより手動および電子的に検索した。バイアスリスクの評価にはCochrane Handbook 5.1.0、メタ解析にはSTATA 13.0(StataCorp LLC[米国・テキサス州カレッジステーション])を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・品質の高かった23試験より、運動介入群1,269例および対照群(薬物療法または介入なし)1,203例のデータを分析した。
・メタ解析では、原発性不眠症の治療において運動介入の有意な影響が確認された(SMD:-1.64、95%CI:-2.08~-1.19、p<0.001)。
・サブグループ解析において、有意なエフェクトサイズが認められた因子は、以下のとおりであった。
●60歳超の高齢患者(SMD:-1.69、95%CI:-2.40~-0.97、p<0.001)
●有酸素運動(SMD:-2.21、95%CI:-2.89~-1.53、p<0.001)
●8~12週間の運動介入継続(SMD:-2.58、95%CI:-3.61~-1.54、p<0.001)
●60分以下の運動介入(SMD:-2.29、95%CI:-3.66~-0.92、p=0.001)
●アジア人患者(SMD:-1.86、95%CI:-2.42~-1.31、p<0.001)
●週4回以下の運動介入(SMD:-1.70、95%CI:-2.29~-1.11、p<0.001)
・メタ解析結果の確実性は、バイアス分析および感度分析より支持された。
著者らは「運動介入は、原発性不眠症患者に良い影響をもたらすことが示唆された。その影響は、とくに高齢患者において顕著であった。原発性不眠症状の治療および睡眠の質の改善には、60分間の運動介入を週4、5回、8~12週間継続することが推奨される。本結果の検証には、サンプル数の増加や研究の質の向上が望まれる」としている。
(鷹野 敦夫)