旅行制限などの緩和に求められるコロナワクチン接種率~モデリング研究

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/08/27

 

 SARS-CoV-2拡大抑制のためにさまざまな公衆衛生的・社会的対策(PHSM)が実施されているが、PHSMの緩和に関する政策立案は非常に難しい。中国・香港大学のKathy Leung氏らは、ワクチンの集団接種により、国内および世界でのCOVID-19の蔓延を悪化させることなく、旅行制限やその他のPHSMをどの程度緩和できるかをモデリング研究で検討した。Lancet Public Health誌オンライン版2021年8月10日号に掲載。

 本研究では、年齢構造化感受性感染除去モデルを用いて、ワクチン接種とPHSMの緩和が感染に及ぼす影響をシミュレーションした。年齢別の感受性と感染力、ワクチン接種、接触パターン、年齢構成について仮定を変更した。ケーススタディとして香港を使用し、ワクチン接種前には全員SARS-CoV-2感受性があると仮定した。本モデルを304の管轄区域(27ヵ国と8ヵ国の277の地方行政区域)に適用した。また、ワクチン集団接種開始前は、PHSMにより実効再生産数(Re)を1.0~9.0に抑制していたと仮定した。大規模なCOVID-19アウトブレイクの回避のためにワクチン接種展開中に維持されるべきPHSMのレベルについて、ワクチン有効率、ワクチン接種率、旅行制限におけるさまざまな条件で評価した。なお、入院の最大収容人数(1日当たり)は人口の0.005%とした。

 主な結果は以下のとおり。

・ワクチンの有効性を最も楽観的な数字(SARS-CoV-2感受性低下:0.80、SARS-CoV-2感染力低下:0.50、症候性COVID-19および入院の抑制:0.95)に仮定し、ワクチン集団接種前のReを2.5と仮定すると、PHSMの緩和により医療に過負荷がかかるアウトブレイクを避けるには、30歳以上のワクチン接種率が100%であることが必要とされる。
・もし旅行制限が緩和され海外旅行が可能になった場合でも、ほとんどの国で、国内および海外における高いワクチン接種率が達成されるまで、国内での再アウトブレイクのリスクを最小限に抑えるには、インバウンド旅行者のウイルス検査と5日以上の検疫を継続する必要がある。

 研究者らは、「すべてのPHSMを完全に緩和するには、最も効果的なワクチンを使用した場合でも、非常に高い接種率が必要となる。ワクチンの感染予防効果の不確実性、感染力増加と免疫回避の可能性のある変異株の出現、現在のワクチン供給不足を考慮すると、これをすぐに達成するのは難しいだろう」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)