愛媛大学の越智 紳一郎氏らは、認知症の周辺症状(BPSD)に対するタンドスピロン(buspironeを改良したazapirone系抗不安薬)の有効性について、とくに超高齢者をターゲットとして検討を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2021年8月31日号の報告。
2013年8月~2018年8月に特別養護老人ホームでBPSDを有する高齢者を対象として、オープンラベル観察研究を行った。認知症の重症度の評価には臨床的認知症尺度(CDR)、BPSDの重症度の評価には臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)を用いた。主要アウトカムは、ベースラインからタンドスピロン維持療法到達4週間後のBPSD重症度の変化とした。タンドスピロンは、30mg/日から開始し、1日3回に分けて投与した。2週間後に看護記録に基づき有効性が十分であると確認された場合、タンドスピロンの投与を継続し、有効性が不十分な場合、タンドスピロンを40~60mg/日へ増量した。
主な結果は以下のとおり。
・研究を完了した患者は33例(女性の割合:76%[25例]、平均年齢:87.1±5.4歳)であった。
・超高齢者は23例(女性の割合:78%[18例]、平均年齢:89.9±3.4歳)含まれていた。
・すべての患者における平均CDRスコアは2.9±0.3であった。
・タンドスピロンによる治療は、すべての患者および超高齢者の両方において、明らかな副作用をほとんどまたはまったく示さず、CGI-SスコアおよびNPI-12の合計スコア、多くのサブスケールスコアの有意な改善が認められた。
著者らは「本研究により、超高齢者においてもBPSDに対するタンドスピロンの有効性および安全性が立証された」としている。
(鷹野 敦夫)