新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として定期的に厚生労働省で開催されている「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の第51回(9月8日開催)において、「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」が報告された。
資料では、65歳以上の高齢者についてワクチンをしなかった場合の推定から実数を比べ、ワクチンの効果を示したもの。
COVID-19ワクチンで8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性
65歳以上の高齢者の9割近くが2回のワクチン接種を終えた環境下で、ワクチンの効果として、高齢者を中心に感染者数、死亡者数の増加抑制が期待されている。今回、HER-SYSデータを用いてワクチン接種などがなかった場合の推定モデルを作成し、COVID-19陽性者数、死亡者数が、同推定モデルと比較してどの程度抑制されたかを試算した。
[試算方法]
2021年1月1日~8月31日までのHER-SYSデータを使用して試算した。
(1)4月~8月までの感染陽性者数と年齢区分別の月毎の増加率を算出
(2)1月~7月までの高齢者の新型コロナウイルス感染陽性者、死亡者数、致死率を検討
(3)(1)で算出した増加率、(2)で算出した致死率を利用し、感染陽性者数と死亡者数の抑制を試算
(なおHER-SYSにおける死亡数の入力率は66%程度と試算される点にも留意が必要)
【COVID-19感染抑制の推定】
7月と8月で、推定10万人以上の高齢者の感染を抑制した可能性がある。
7月:推定モデル感染者数2万7,052、実数5,953、推定との差2万1,099
8月:推定モデル感染者数11万778、実数2万4,110、推定との差8万6,668
【COVID-19感染死亡数抑制の推定】
7月と8月で、推定8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性がある。
7月:推定死者数1,768、死亡者実数145、推定との差1,623
8月:推定死者数7,544、死亡者実数725、推定との差6,819
なお、参考資料として「2021年1月~7月の新型コロナウイルス感染陽性者の致死率」も示され、2021年1月と7月を比較すると、1月の致死率が90歳以上で15.56%だったものが、7月では同数値が5.64%まで低下していることが示されている。
(ケアネット 稲川 進)