ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行・再発乳がんの1次/2次治療では、内分泌療法との併用によるCDK4/6阻害薬投与が標準治療となっているが、進行後の治療についてはまだ定まっていない。最近、リアルワールドデータがいくつか発表されており、今回、パルボシクリブ投与後に進行したHR+/HER2-進行・再発乳がんに対するアベマシクリブの効果を後方視的に検討した結果を、兵庫県立がんセンターの高尾 信太郎氏が、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で発表した。
高尾氏らは、2017年12月~2021年3月、兵庫県立がんセンターにおいてパルボシクリブを含むレジメンで進行後、アベマシクリブが投与されたHR+/HER2-の進行・再発乳がん患者14例について後方視的に検討した。全例での効果のほか、パルボシクリブ使用後すぐにアベマシクリブを投与したsequential投与と、2剤の間に1レジメンでも他の治療が実施されたnon-sequential投与における効果の比較も行った。
主な結果は以下のとおり。
・14例中、sequential投与が8例、non-sequential投与が6例だった。
・年齢中央値は65.5歳(範囲:43~76)、Stage IVが5例、再発が9例で、内臓転移は71%の患者に認められた。
・前治療については、内分泌療法レジメン数の中央値が2、化学療法施行例の割合は43%、全体のレジメン数の中央値は2.5だった。
・内分泌療法薬は3例が変更されておらず、それ以外は変更されていた。
・アベマシクリブの全奏効率(ORR)は36%、臨床的有効率(CBR)は64%だった。sequential群とnon-sequential群別にみると、ORRが50%と17%、CBRが88%と50%で、sequential群で優位な傾向を示した。
・アベマシクリブの治療成功期間(TTF)については、14例中12例(86%)が6ヵ月以上で、うち4例は現在も投与中である。
・パルボシクリブとアベマシクリブのTTFに相関はなく、sequential群、non-sequential群とも相関はなかった。
・パルボシクリブ後のアベマシクリブのTTF中央値は10.6ヵ月で、sequential群では10.6ヵ月、non-sequential群では9.0ヵ月だった。
・パルボシクリブとアベマシクリブを合わせたTTF中央値は17.2ヵ月で、sequential群では26.8ヵ月、non-sequential群では17.2ヵ月だった。
・併用する内分泌療法別にみたTTFは、内分泌療法のパターンでとくに特徴的なものはみられなかった。
高尾氏は、「in vitroでは、パルボシクリブとアベマシクリブのcross-resistanceが報告されている一方で、CDK4/6阻害薬抵抗性獲得のメカニズム、パルボシクリブとアベマシクリブの作用スペクトラムの違いから、パルボシクリブ抵抗性獲得後にアベマシクリブが有効である患者が存在することが示唆されている。今回の検討では、パルボシクリブ後のアベマシクリブ使用、とくにsequentialの使用で非常に良好な成績がみられた。今後さらにリアルワールドテータを集積したい」と述べた。
(ケアネット 金沢 浩子)