AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬であるダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)を対象とした第III相DAPA-CKD試験の3つの新たなサブ解析の結果を発表した。
DAPA-CKD試験のサブ解析でダパグリフロジンのベネフィットをさらに裏付け
DAPA-CKD試験の新たなサブ解析の結果、2型糖尿病の有無にかかわらず、慢性腎臓病(CKD)患者の治療で、ダパグリフロジンの心腎および死亡率に対するベネフィットが一貫して認められることをさらに裏付けた。また、リアルワールドエビデンス研究となるREVEAL-CKDでは、世界的にステージ3のCKD診断率が著しく低いことが明らとなった。
DAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、CKDステージの2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例を対象に、ダパグリフロジン10mg投与による有効性と安全性をプラセボと比較検討した国際多施設共同無作為化二重盲検第III相試験。本剤は1日1回、標準治療と併用された。複合主要評価項目は、腎機能の悪化もしくは死亡リスクで、副次評価項目は、腎機能の複合評価項目、心血管死もしくは心不全による入院、および全死因死亡のいずれかの初発までの期間。DAPA-CKD試験は日本を含む21ヵ国で実施された。
DAPA-CKD試験での死亡の相対リスク減少率は4地域で30~49%
DAPA-CKD試験における腎臓、心血管(CV)および死亡率のアウトカムに関する地域別の解析データから、CKD患者におけるダパグリフロジンの有益性は、北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパおよびアジアを含む事前に規定された地理的地域間においても同程度であることが示された。複合主要評価項目である推定糸球体濾過量(eGFR、腎機能の重要な指標)の50%以上の持続的低下、末期腎疾患(ESKD)の発症および、心血管または腎不全による死亡の相対リスク減少率は、4つの地域で一貫して30~49%(プラセボと比較したダパグリフロジンの絶対リスク減少率は3.3~8.0%)だった。
また、別のDAPA-CKD試験のサブ解析では、ベースラインの心血管系併用薬がCKD患者におけるダパグリフロジンの効果に影響を与えるかが評価され、その結果、さまざまな心血管系併用薬使用の有無にかかわらず、CKD患者における腎臓、心血管評価項目および死亡率に対する本剤の明らかな有益性が示された。
具体的には、主要複合アウトカムの最初のイベント発生までの時間におけるダパグリフロジンの効果は、プラセボとの比較で、ベースライン時にアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用していた患者(ハザード比[HR]0.61、95%信頼区間[CI]0.51-0.74)と使用していない患者(HR0.54、95%CI0.20-1.46;交互作用のp=0.69)で同程度だった。また、利尿薬、カルシウム拮抗薬およびβ遮断薬など、解析された他の心血管系併用薬使用の有無にかかわらず、本剤の一貫した効果が示された。
そのほかのDAPA-CKD試験のサブ解析では、治療開始後早期のeGFRの低下は、ダパグリフロジンで治療した患者により多いことが示された。この早期のeGFRの変化は、本剤の作用機序と関連し、糸球体における好ましい血行動態変化を反映していると考えられる。なお、低下の程度にかかわらず、この早期におけるeGFRの低下は、重篤な有害事象、有害事象による治療中止、腎臓関連事象または体液量減少事象のリスク増加とは関連していなかった。
なお、これらのDAPA-CKD試験の解析データは2021年の米国腎臓学会(ASN)腎臓週間で発表された。
(ケアネット 稲川 進)