統合失調症、双極性障害、うつ病を含む重度の精神疾患を有する人は、身体的健康においても、一般集団と比較し、大きな格差を抱えている。この格差の程度は明らかとなっていないが、新たなエビデンスでは、重度の精神疾患患者はCOVID-19による感染や死亡リスクが高いことが示唆されている。英国・マンチェスター大学のLamiece Hassan氏らは、UKバイオバンクのコホート研究データを用いて、重度の精神疾患患者におけるCOVID-19関連の感染、入院、死亡率を調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年12月7日号の報告。
UKバイオバンクから抽出した44万7,296例(統合失調症:1,925例、双極性障害:1,483例、うつ病:4万1,448例、重度の精神疾患でない対照群:40万2,440例)を対象とし、医療および死亡に関する記録とリンクさせた。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、診断とCOVID-19関連アウトカムとの違いを調査した。また、社会人口統計学的要因および併存疾患で調整した場合においても検討を行った。
主な結果は以下のとおり。
・調整前の分析では、重度の精神疾患患者は、対照群と比較しCOVID-19関連の死亡リスクのオッズ比が高かった。また、重度の精神疾患患者は、COVID-19関連の感染、入院リスクも高かった。
【死亡リスクのオッズ比(OR)】
●統合失調症:4.84(95%信頼区間[CI]:3.00~7.34)
●双極性障害:3.76(95%CI:2.00~6.35)
●うつ病:1.99(95%CI:1.69~2.33)
【感染リスクのOR】
●統合失調症:1.61(95%CI:1.32~1.96)
●双極性障害:1.48(95%CI:1.16~1.85)
●うつ病:1.47(95%CI:1.40~1.54)
【入院リスクのOR】
●統合失調症:3.47(95%CI:2.47~4.72)
●双極性障害:3.31(95%CI:2.22~4.73)
●うつ病:2.08(95%CI:1.89~2.29)
・調整後の分析では、死亡リスクと入院リスクのORは、重度の精神疾患患者において有意に高いままであったが、感染リスクのORは、うつ病のみ有意に高いままであった。
著者らは「統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患患者では、COVID-19関連の感染、入院、死亡リスクが上昇することが示唆された。この違いが既存の人口統計学的要因や併存疾患によって説明できるのは、一部分であった。そのため、重度の精神疾患患者に対しては、優先的にワクチン接種や予防措置を講じる必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)