国内でも若年層へ新型コロナワクチン接種を浸透させるため、いくつかの自治体が接種促進のためのキャンペーンを打ち出していた。その先駆けである米国ではインセンティブとして宝くじを配布し接種の向上を試みていたが、実際のところそれが有効かどうかは不明である。そこで、米・ドレクセル大学のBinod Acharya氏らは、宝くじなどのインセンティブがワクチン接種の増加に寄与するのかを調べるための横断的研究を行った。その結果、宝くじプログラムは新型コロナワクチン接種へのためらいを減らすことに関連していると示唆された。ただし、その成功は州によって異なる可能性があるという。JAMA Network Open誌2021年12月1日号掲載の報告。
本研究には、ワクチン宝くじプログラムを実施している11州(取り扱い群)とプログラム未実施28州(対照群)に対し、家庭パルス調査(HPS)と州ごとの1日あたりのワクチン接種率を基に『新型コロナワクチンを接種しましたか?』という質問を行い、それに回答した成人40万3,714人のデータを使用した。差分の差分法(DID)では、HPSの質問反応を使用し、取り扱い群と対照群の間でワクチン接種率の変化を比較した。一方、拡張された合成コントロール(ASC:augmented synthetic control)法では、取り扱い群の毎日の新たなワクチン接種率を、対照群のドナープールから構築され合成して重みづけされた対照群と比較した。データは2021年3月17日~7月5日までのものが分析された。
主な結果は以下のとおり。
・平均年齢±SDは52.7±15.7歳だった。
・女性は23万9,563例 (加重パーセンテージ:51.6%)、黒人3万1,746例(同:11.9%)、ヒスパニック系3万9,709例(同:18.2%)、白人33万4,034例(同:76.4%)がHPSのワクチン接種状況に関する質問に回答した。
・HPSに回答した8万949人(同:28.1%)はワクチン接種をしていなかった。
・両方法でプールされた分析によると、宝くじプログラムがワクチン接種の増加と関連していることが示された。
・ASCによる分析では、宝くじプログラムが0.208 log points(95%信頼区間[CI]:0.004~0.412)の増加に関連していることが明らかになった。これは1日あたり新しくワクチン接種率が平均23.12%増加することを意味する。
・州独自の分析によると、どちらの方法でも宝くじプログラムが役立つことが示唆され、オハイオ州では0.09 log points(p<0.001)、メリーランド州は0.26 log points(p<0.001)、オレゴン州は0.15 log points(p=0.002)、ワシントン州は0.37 log points(p<0.001)だった。一方で、アーカンソー州、ケンタッキー州、ウエストバージニア州では有用ではなかった。
・ASC分析では、宝くじプログラムがニューメキシコ州(0.32 log points、p<0.001)、ニューヨーク州(0.33 log points、p=0.001)で、ワクチン接種と正の関連があることがわかった。
(ケアネット 土井 舞子)