オミクロン株の急拡大に伴い、首都圏を含む13都県に「まん延防止等重点措置」が決定した中、日本医師会・中川 俊男会長は、3回目の追加接種やエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)への優先的対応、オミクロン株の特徴的な症状などについて、国内の現況や諸外国のデータを踏まえ、記者会見で見解を示した。
副反応を懸念か、モデルナ製ワクチンに正しい理解を
中川会長は、伸び悩む3回目接種の実施割合に関して、「ワクチンの供給や配送の問題もあるが、比較的確保できているモデルナ製ワクチンについて、国民の理解が十分でないのも(追加接種が進まない)原因の1つかもしれない」と懸念を表した。
モデルナ製ワクチンは、ファイザー製ワクチンと比較して10~20代男性の心筋炎・心膜炎リスクが高いとの報告がある。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に比較するとその可能性は軽微であり、副反応の多くは軽症で済むことが知られている。
会長は、(1)他年代の男性や女性においてそのようなリスクは見られないこと、(2)1・2回目と種類の異なるワクチンを接種すること(交互接種)も可能で、むしろ中和抗体が高くなることなどを説明し、モデルナ製ワクチンの安全性と有効性に正しい理解を求めた。
参考)
10代・20代の男性と保護者へのお知らせ~新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について~(厚労省)
生活を支えるためには教育現場への優先的対応も不可欠
社会機能を維持するためエッセンシャルワーカーへの追加接種や濃厚接触者の待機期間短縮(10日→6日)など、優先的な対応が呼び掛けられている。政府が示す「
新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、継続が求められる主な業種が示されているものの、医療・福祉関係者ほか具体的な対象は地方自治体や各事業者に任されている現状だ。
中川会長は、東京都で直近1週間の10代以下の感染者数が前の週の6倍に上っていることを挙げ、「保育・教育現場に感染が広がると、(エッセンシャルワーカーを含む)保護者が業務に従事できなくなる恐れがある」と懸念。教育現場を支える学校の教職員や保育士などもエッセンシャルワーカーに含まれることを明確化するよう要請した。
また、小児のワクチン接種について、「子供から家庭感染に広がる懸念もあり、これまで対象とならなかった11歳以下、とくに重症化リスクがある基礎疾患がある子供達に対しても新型コロナワクチンの接種を進めていく必要がある」と指摘した。現在、ワクチン接種を希望する5~11歳の子供が速やかに接種できるような体制整備が進められている。
オミクロン株の「軽症」を甘く考えるべきではない
中川会長はオミクロン株の症状について、海外や国内の症例報告を参考に以下の特徴を説明した。
(1)嗅覚障害や味覚障害を訴える割合が少なく、発熱・倦怠感・上気道症状が多い
(2)割合として重症化率は低いものの、日本の
重症度分類を知っておく必要がある
中等症Iは呼吸困難や肺炎所見を示し、中等症IIは酸素投与が必要な症例、重症は人工呼吸器管理またはICUへの入室が必要な症例とされる。よって、肺炎所見がなければ医学的には軽症に分類されるが、個々人にとっては高熱や全身症状、上気道症状など、つらい症状が多い。
続いて同氏は、高齢者の感染者数が少ないことから、現時点で高齢者の重症化リスクは判断すべきでないとし、オミクロン株の重症化リスクはデルタ株の2~3分の1との報告もあるが、COVID-19自体の重症化リスクがインフルエンザより二桁高いことを考慮すると、危機感を持つべき感染症であることは変わらないと説明。
その上で、オミクロン株の感染力の強さから、医療従事者への感染などから医療の提供体制を制限せざるを得ない状況も生じているとし、「今後発生する多数の軽症者に対する医療提供体制を整備するなど、これからもCOVID-19の収束を目指して粘り強く邁進していく」とまとめた。
(ケアネット 堀間 莉穂)