自動車の運転をやめさせることは、認知症高齢者の感情や健康に重大な影響を及ぼす可能性があり、このことはケアパートナーである家族にとっても問題となる。自動車の自動運転化は、認知症高齢者やケアパートナーにとって、自動車の運転を停止することやそれに伴う悪影響を緩和するうえで役立つ可能性がある。しかし、ケアパートナーを対象に認知症高齢者の自動運転車利用に対する考えを調査した研究は、これまで行われていなかった。カナダ・トロント大学のShabnam Haghzare氏らは、ケアパートナーの視点から、認知症高齢者における自動運転車の利用について、調査を行った。The Gerontologist誌オンライン版2021年11月19日号の報告。
認知症高齢者20例をこれまで/または現在介護している家族ケアパートナーを対象に、認知症高齢者の自動運転車の利用についての見解を評価するため、混合法研究を実施した。質問票および半構造化面接を用いて、認知症高齢者のケアパートナーにおける自動運転車の利用受け入れ状況と認知症高齢者に対する自動運転車の潜在的な有用性について調査を行った。
主な結果は以下のとおり。
・ケアパートナーは、認知症高齢者の自動運転車の利用について、より高い社会参加の促進などのベネフィットを感じていることが示唆された。
・しかし、ケアパートナーは、大きな懸念も抱いており、自分の家族の認知症高齢者が自動運転車を利用した場合、その信頼性や安全性が低いことを問題視していた。
・主な懸念点は以下のとおりであった。
●自動運転車が認知症高齢者に対応するように設計されていない点
●認知症高齢者に特有の懸念ではなく、自動運転車自体に対する懸念点
●自動運転の利用により認知症状が悪化する可能性
著者らは「本知見は、認知症高齢者でもよりアクセスしやすい便利な自動運転車の設計に役立つ可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)