未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善したことが、ESMO 2021で発表されている。同試験のアジア人サブグループの解析結果を、がん研有明病院の高野 利実氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。なお本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。
[KEYNOTE-355試験]
・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)
・試験群(2:1の割合で下記2群に無作為に割り付け):
ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)
プラセボ群:プラセボ+化学療法
・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるOSと無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性
アジア人サブセットにおける主な結果は以下のとおり。
・データカットオフは2021年6月15日。ITT集団における追跡期間中央値は43.8ヵ月だった。
・アジア人サブセットには160例(ペムブロリズマブ群113例、プラセボ群47例)が含まれた(日本人は87例)。
・ベースライン特性を全体集団と比較すると、ECOG PS1の患者および化学療法としてタキサンの投与を受けた患者の割合が若干少なく、同クラスの化学療法歴のある患者がプラセボ群に若干多かった。
[OS中央値]
CPS≧10:ペムブロリズマブ群26.7ヵ月 vs.プラセボ群17.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.28~1.04)
全体集団では23.0ヵ月 vs.16.1ヵ月(HR:0.73、95% CI:0.55~0.95、p=0.0093)
CPS≧1:22.0ヵ月 vs.16.9ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.40~0.97)
全体集団では17.6ヵ月 vs.16.0ヵ月(HR:0.86、95% CI:0.72~1.04、p=0.0563)
ITT集団:24.1ヵ月 vs.17.2ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.39~0.84)
全体集団では17.2ヵ月 vs.15.5ヵ月(HR:0.89、95% CI:0.76~1.05)
[PFS中央値]
CPS≧10: 17.3ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.48、95% CI:0.24~0.98)
全体集団では9.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95% CI:0.50~0.88)
CPS≧1:7.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.37~0.91)
全体集団では7.6ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.75、95% CI:0.62~0.91]
ITT集団:8.8ヵ月 vs.6.7ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.44~0.99)
全体集団では7.5ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.82、95% CI:0.70~0.98)
・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群77.9% vs.プラセボ群78.7%と全体集団と比較して若干多く報告された(全体集団では68.1% vs. 66.9%)が、安全性について全体の傾向は同様で、管理可能であった。
高野氏は、ペムブロリズマブ群におけるベネフィットがアジア人でより大きい傾向がみられることについて、症例数の限られたサブグループ解析であり、慎重に解釈する必要があるとの見解を示しつつ、新たな臨床研究で検討すべき重要なポイントであると述べた。
(ケアネット 遊佐 なつみ)