小型(2cm以下)末梢非細胞肺がん(NSCLC)における区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性比較試験が実施され、区域切除の非劣性が示された。
現在は、2cm以下のNSCLCにおいても標準外科療法は肺葉切除である。より切除範囲の小さい区域手術は呼吸機能を温存できるため、小型NSCLCに適用できれば恩恵は大きいとされる。しかし、両群を比較した無作為化試験は行われていなかった。
JCOG0802試験はOSにおける区域切除の利点を示した最初の第II相試験となった
そのような中、小型末梢NSCLCにおける区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性比較試験(JCOG0802試験)が実施された。結果を国立がん研究センター東病院の坪井正博氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。
[JCOG0802試験]
・対象:(腫瘍径≦2cm、最大腫瘍径に対する充実性成分の比[C/T比]>0.5、外套1/3)の臨床Stage IA NSCLCまたは疑い患者
・試験群:区域切除
・対照群:肺葉切除
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]術後呼吸機能(6ヵ月、1年)、無再発生存率(RFS)、局所再発の割合、有害事象など
非劣性マージンはハザード比(HR)1.54、集積期間3年、追跡期間5年と設定された。
JCOG0802試験の主な結果は以下のとおり。
・2009年8月~2014年10月に1,106例が登録され、肺葉切除(n=554)と区域切除(n=552)に無作為に割り付けられた。
・追跡期間中央値7.3年であった。
・5年OSは区域切除群94.3%、肺葉切除群は91.1%、で区域切除群の非劣性と優越性が確認された(HR:0.663、95%信頼区間[CI]:0.474~0.927、非劣性p<0.0001、優越性p=0.0082)。
・OSの改善は、すべてのサブグループにわたり区域切除術群で観察された。
・術後1年における呼吸機能FEV1の減少は、区域切除群8.5%、肺葉切除群12.0%、と区域切除で良好であった。しかし、2群間の差は3.5%で、事前に設定した基準(10%)に達しなかった。
・5年RFSは、区域切除群で88.6%、肺葉切除群で87.9%と同等であった(HR:0.998、95%CI:0.753~1.323)。
・全再発割合は区域切除群12.1%、肺葉切除群7.9%、と区域切除群で有意に多かった(p=0.0214)。局所再発の割合についても区域切除群10.5%、肺葉切除群5.4%、と区域切除群で有意に多かった(p=0.0018)。
・全死亡は区域切除群10.5%、肺葉切除群14.9%、と肺葉切除群で多かった。なかでも、肺がん含む2次がんによる死亡は肺葉切除群5.6%、区域切除群2.2%、と肺葉切除群で多かった。
JCOG0802試験は、OSにおける区域切除の利点を示した最初の第II相試験となった。坪井氏は、後治療による違い、手術形式による違いなどは今後の研究課題であるが、このJCOG0802試験の結果から、区域切除を小型肺がんの標準外科治療として考慮すべきであると述べた。
(ケアネット)