わが国の肺癌診療ガイドラインでは2cmを超えるStage IA/BおよびIIA(TNM病期分類8版)の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するテガフール・ウラシルの術後補助療法は推奨または提案、という位置づけである。
広島大学の津谷康大氏らによる、再発高リスクのStage I(TNM8版)完全切除NSCLCに対する補助化学療法の有効性を評価した試験結果がThe Annals of Thoracic Surgery誌に発表された。
同試験では、肺葉切除術を受けたStage I NSCLC1,278例のデータを前向きに収集し、分析した。再発リスク因子は、無再発生存率(RFS)のCox比例ハザードモデルを基に規定し、補助化学療法実施患者と非実施患者の生存率を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・RFSリスク因子としては、年齢70歳超、浸潤径2cm超、リンパ管侵襲、血管侵襲、臓側胸膜浸潤が同定された。
・高リスク群(641例)においては、5年RFS(補助化学療法実施群81.4%対非実施群73.8%)、5年OS(補助化学療法実施群92.7%対非実施群73.8%)、とRFS、OSともに補助化学療法実施群で有意に長かった(5年RFS p=0.023、5年OS p<0.0001)。
・低リスク群(637例)においては、補助化学療法実施群と非実施群の5年RFSは差はなかった(補助化学療法実施群98.1%対非実施群95.7%、p=0.30)。
補助化学療法は、病理学的T1c/T2a、リンパ節/血管侵襲など、高再発リスクを有するStage I NSCLC患者において、生存を改善する可能性が示唆される。
(ケアネット 細田 雅之)