米国・モデルナ社は4月19日付のプレスリリースで、同社初の追加接種用2価ワクチン候補(mRNA-1273.211)が、オミクロン株を含むすべての変異株に対し、同社の承認済みのワクチン(mRNA-1273、商品名:スパイクバックス筋注)と比較して優れた中和抗体価を示したことを発表した。ワクチン効果の優越性は、追加接種の6ヵ月後も維持されたという。なお、mRNA-1273.211の忍容性および安全性は、承認済みのmRNA-1273追加接種(50μg)とほぼ同様であった。本研究は、査読前論文のオンライン・アーカイブである
「Research Square」※2022年4月15日号1)にも掲載された。
※今後、審査によっては論文内容が修正される場合あり
本試験は、mRNA-1273.211の単回ブースター投与による反応原性および免疫原性を評価する非盲検第II/III相臨床試験で、少なくとも6ヵ月前にmRNA-1273の2回投与によるプライマリーシリーズを完了した米国の18歳以上の被験者896例を対象に、ワクチン候補mRNA-1273.211を50μg追加接種した群(300例、平均年齢50.7歳)と、100μg追加接種した群(596例、平均年齢53.0歳)を検証した。
主な結果は以下のとおり。
・承認済みのmRNA-1273を50μg追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後で幾何平均抗体価(GMT):630.5(95%CI:520.0~764.9)、接種181日後でGMT:145.6(95%CI:118.1~179.5)となり、オミクロン株への強力な中和抗体反応が得られたものの、接種後6ヵ月で効果が減少した。
・新たな2価ワクチン候補のmRNA-1273.211を追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後でGMT:1389.8(95%CI:1212.1~1593.4)、接種181日後でGMT:312.9(95%CI:269.5~363.4)となった。
・mRNA-1273.211は、既存のmRNA-1273に比べ、中和抗体価が1ヵ月時点での幾何平均比(GMR):2.20(95%CI:1.74~2.79)、および6ヵ月時点でGMR:2.15(95%CI:1.66~2.78)となり、2倍以上増加したことが確認された。
・mRNA-1273.211の50μg投与後の副作用の発現率と比較して、100μg投与後の副作用の発現率が高いことが確認されたが、忍容性はおおむね良好で、50μg投与後に非自発的に報告された副反応および自発的に報告された有害事象の発現率は、mRNA-1273の50μg接種と同程度だった。
同社は現在、オミクロン株の特異的な変異に対応した最新の追加接種用2価ワクチン(mRNA-1273.214)も第II/III相臨床試験で評価中。2022年秋の北半球用追加接種ワクチンの選定に向けて、試験の初期データが第2四半期中に得られる予定としている。
追加接種用2価ワクチン候補のmRNA-1273.211は、ベータ株に基づく、9個のスパイク蛋白の変異(うち4つはオミクロン株に存在する変異)に、mRNA-1273.214は、オミクロン株に基づく、32個のスパイク蛋白の変異に、それぞれ対応しているという。
(ケアネット 古賀 公子)
1)Safety, Immunogenicity and Antibody Persistence of a Bivalent Beta-Containing Booster Vaccine. Research Square. 15 Apr, 2022.