カナダ・トロント大学のAreti Angeliki Veroniki氏らは、アルツハイマー病(AD)のマネジメントにおいて、患者の特徴による抗認知症薬の有効性および安全性について、比較検討を行った。その結果、抗認知症薬の治療選択において、患者の特徴を十分に考慮する必要があることを報告した。BMJ Open誌2022年4月26日号の報告。
システマティックレビューおよび患者個々のデータ(IPD)を集めたネットワークメタ解析(NMA)を実施した。MEDLINE、Embase、Cochrane Methodology Register、CINAHL、AgeLine、Cochrane Central Register of Controlled Trialsより検索した(~2016年3月)。成人AD患者2万1,138例を含む80件のRCTおよび6,906例のIPDを含む12件のRCTが抽出された。治療内容は、抗認知症薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン)の単独または他の抗認知症薬やプラセボとの併用であった。著者、スポンサー、データ提供プラットフォームにIPDの提供を依頼した。IPDが利用できない場合には、集計データを用いた。研究の質の評価には、Cochraneのバイアスリスクツールを用いた。2段階ランダム効果IPD-NMAを実施し、結果の評価にはCINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いた。主要アウトカムおよび副次アウトカムは、ミニメンタルステート検査(MMSE)による認知機能の評価および有害事象とした。
主な結果は以下のとおり。
・本IPD-NMAでは、プラセボを含む9種類の治療法について比較を行った。
・ドネペジル(平均差[MD]:1.41、95%CI:0.51~2.32)およびドネペジル+メマンチン(MD:2.57、95%CI:0.07~5.07)による治療は、プラセボ群と比較し、MMSEスコアの改善が認められた(56 RCT、1万1,619例、CINeMAスコア:中)。
・Pスコアによると、経口リバスチグミン(OR:1.26、95%CI:0.82~1.94、Pスコア:16%)およびドネペジル(OR:1.08、95%CI:0.87~1.35、Pスコア:30%)の安全性プロファイルは最も不良であったが、プラセボと比較した場合、推定治療効果はいずれも十分に正確ではなかった(45 RCT、1万5,649例、CINeMAスコア:中~高)。
・中等度~重度のADでは、ドネペジル、メマンチン、ドネペジル+メマンチンによる治療が最も有効であった。
・軽度~中等度のADでは、ドネペジルと経皮吸収型リバスチグミンによる治療が最も有効であった。
・ベースライン時のMMSEの差を調整すると、経口リバスチグミンとガランタミンによる治療でMMSEスコアの改善が認められたが、併存疾患を調整した場合は、経口リバスチグミンのみが有効であった。
・認知機能にとって臨床的に重要な指標である1.40 MMSEポイントを超えるMDは、経口リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの単独療法を除くすべての治療レジメンにおいて認められたが、その不確実性は高かった。
・本研究の限界として、公開されたRCTの3分の2が不完全なアウトカムデータに対するバイアスリスクの高さと関連していた点、IPDが利用できたのは包含されたRCTの15%のみであった点が挙げられる。
(鷹野 敦夫)