転移のある大腸がん(mCRC)に対するトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法(FTD/TPI+BEV)は、トリフルリジン・チピラシル単剤療法(FTD/TPI)に比べて優れた有用性を認めるが、好中球減少症のリスクが高いことがメタ解析の結果から示された。国立がん研究センター東病院の吉野 孝之氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。
トリフルリジン・チピラシルの併用療法は単剤療法に比べて良好な結果
トリフルリジン・チピラシル単剤療法は、難治性のmCRCに対する標準治療として広く普及している。一方で、トリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法については、難治性mCRC患者を対象とした第I相および第II相試験においてその有用性と忍容性が示されている。しかし、トリフルリジン・チピラシル単剤療法とトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法を直接した臨床研究はほとんどない。本検討では、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryから検索した875文献から、PRISMフローチャートを用いて29の文献(RCT:5文献、非RCT:11文献、前向き観察研究:10文献を含む)を抽出してメタ解析を行い、両治療法の有効性と安全性について評価した。
・対象:トリフルリジン・チピラシル単剤療法またはトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法が投与されたmCRC 患者、1万285例
・試験群:トリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法
・対照群:トリフルリジン・チピラシル単剤療法
・評価項目:病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、有害事象(AE)など
トリフルリジン・チピラシル単剤療法とトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法の有効性と安全性について評価した主な結果は以下のとおり。
・有効性の情報がプールされたデータ解析からは、試験群は対照群に比べて良好なDCR、PFS、OSの結果が示されていた。
・両群の有効性について比較した唯一のRCT(第II相EudraCT試験:n=93)において、試験群と対照群のDCRはそれぞれ67%、51%で、リスク比(RR)は1.32(95%信頼区間[CI]:0.94~1.86、p=0.11)であった。
・PFS中央値はそれぞれ4.6ヵ月と2.6ヵ月で、ハザード比(HR)は0.45(95%CI:0.29~0.72、p=0.0015)であった。
・OSの中央値はそれぞれ9.4ヵ月と6.7ヵ月で、HRは0.55(95%CI:0.32~0.94、p=0.03)であった。
・安全性の情報の事後解析からは、試験群と対照群でGrade3以上の発熱性好中球減少症(7% vs.3%)、無力症/倦怠感(4% vs.4%)、下痢(6% vs.2%)、悪心(5% vs.1%)、および嘔吐(3% vs.1%)の発現率は同程度だったが、Grade3以上の好中球減少症に関しては、対照群に比べて試験群で発現頻度が高かった(43% vs.29%)。また、AEによる中止率は、両群間で差は認められなかった。
(ケアネット)