スウェーデン・カロリンスカ研究所のM. Holm氏らは、双極性障害患者におけるリチウム中止後の精神科入院および治療失敗の予防に対する気分安定薬および抗精神病薬の実際の有効性を比較検討するため、双極性コホート研究を実施した。その結果、双極性障害患者のリチウム中止後の精神科入院を予防するためには、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬がとくに効果的であることが示唆された。また、著者らは、リチウムの再開は投薬変更のリスクが最も低くなる可能性があることを報告した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2022年6月25日号の報告。
フィンランドのヘルスケアレジスターを用いて、1987~2018年に双極性障害と診断され、リチウム治療を1年以上行った後に中止した同国内のすべての患者4,052例(中止前のリチウム治療期間:中央値2.7年)を特定した。精神科入院および治療失敗(精神科入院、死亡、投薬変更)リスクの調査には、個人内Cox回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・気分安定薬単剤療法のうち、バルプロ酸の使用は、気分安定薬未使用の場合と比較し、入院リスクが低かった(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97)。
・抗精神病薬単剤療法のうち、LAI抗精神病薬(HR:0.48、95%CI:0.26~0.88)およびchlorprothixene(HR:0.62、95%CI:0.44~0.88)の使用は、抗精神病薬未使用の場合と比較し精神科入院リスク低く、クエチアピン(HR:1.26、95%CI:1.07~1.48)および経口オランザピン(HR:1.23、95%CI:1.01~1.49)の使用は、抗精神病薬未使用の場合と比較し精神科入院リスクが高かった。
・気分安定薬単剤療法のうち、リチウムの使用は、バルプロ酸の使用と比較し、治療失敗のリスクが低かった(HR:0.82、95%CI:0.76~0.88)。
(鷹野 敦夫)