これまでの研究で、パニック症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するデジタル治療であるCapnometry Guided Respiratory Intervention(CGRI)の臨床的ベネフィットが報告されている。米国・FreespiraのRobert N. Cuyler氏らは、実臨床におけるCGRIの治療アウトカムの報告を行った。その結果、これまでの研究結果と同様に、CGRIは、有意な症状改善効果と良好なアドヒアランスが期待できる治療介入であることが確認された。結果を踏まえ著者らは、パニック症患者およびPTSD患者に対するCGRIは、短い治療期間で良好なアドヒアランスを示し、臨床的ベネフィットに優れることから、有望な治療オプションとなりうるとしている。Frontiers in Digital Health誌2022年11月17日号の報告。
パニック症患者1,395例およびPTSD患者174例を対象に、CGRI治療前後の自己報告による症状変化、呼吸数および呼気終末CO2レベル、治療脱落率、治療アドヒアランスを評価した。CGRIは、呼吸数および呼気終末CO2レベルを測定するとともに、呼吸の正常化、ストレス、不安、パニック症状に対処する患者の対応力向上を目的として、28日間在宅療法として実施した。また、治療エピソード中、毎週のフォローアップによる初期トレーニングを提供するため、遠隔医療コーチングサポートを行った。遠隔データのアップロードおよびモニタリングにより、個別のコーチングと集計結果分析を簡便化した。主要アウトカムは、治療前後の自己報告によるパニック症重症度尺度(Panic Disorder Severity Scale:PDSS)およびDSM-5のPTSDチェックリスト(PCL-5)のスコアの変化とした。
主な結果は以下のとおり。
・パニック症患者では、治療前後のPDSS合計スコアが平均50.2%減少していた(p<0.001、d=1.31)。
・パニック症患者における治療反応(PDSS合計スコア40%以上の低下)率は、65.3%であった。
・PTSD患者では、治療前後のPCL-5合計スコアが41.1%減少していた(p<0.001、d=1.16)。
・PTSD患者における治療反応(PCL-5スコア10ポイント以上の低下)率は、72.4%であった。
・個人レベルでの治療反応の追加分析では、Reliable Change Indexを用いた治療反応率は、パニック症患者で55.7%、PTSD患者で53.5%であった。
・ベースライン時の呼気CO2レベルが正常値または正常値未満の患者では、同等の効果が認められた。
・28日間の治療期間全体では、平均アドヒアランス率は、パニック症患者で74.8%、PTSD患者で74.9%であった。
・治療脱落率は、パニック症患者で10%、PTSD患者で11%であった。
(鷹野 敦夫)