睡眠不足や不規則な睡眠というのは心血管疾患や2型糖尿病などの発症に関連しているが、アテローム性動脈硬化との関連性についてはあまり知られていない。そこで、米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告。
動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査
本研究はコミュニティベースの多民族研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、睡眠時間や睡眠の規則性について、アクティグラフィ
※(活動量測定検査)を7日間手首に装着した記録を評価し、無症候性のアテローム性動脈硬化との関連性を横断的に調査した。
※腕時計型の加速度センサーで、腕や足首に装着することで活動/休止リズムサイクルを記録するもの。睡眠/覚醒アルゴリズムを記録できる。
本研究では、2010~13年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いた。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数であった。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化した。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算した。なお、解析モデルは人口統計、心血管疾患の危険因子、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、睡眠時間、中途覚醒など、睡眠特性に合わせ客観的に評価・調整した。
動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査した主な結果は以下のとおり。
・全体として、7日間を通してさまざまな睡眠を取った(たとえば、ある夜は睡眠時間が短く、ある夜は睡眠時間が長かった)参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高かった。
・参加者の約38%では睡眠時間が90分以上変化し、18%では120分以上も変化していた。
・睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向であった。
・調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値であった(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。
・より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強かった (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。
・関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も持続した。
・睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきは、アテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していた。
(ケアネット 土井 舞子)