花粉症患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染時の嗅覚・味覚障害のリスクが高く、その回復も遅いことが、中国・西安交通大学のJingguo Chen氏らの調査によって明らかになった。Laryngoscope investigative otolaryngology誌2023年2月号掲載の報告。
急な嗅覚障害や味覚障害の発現は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予測因子と考えられている。しかし、慢性副鼻腔炎や喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎などを有する患者では、SARS-CoV-2に感染する前にすでに併存疾患の影響によって嗅覚障害や味覚障害が生じている可能性があり、それらによる評価が効果的ではないことがある。そのため、研究グループは、呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の嗅覚・味覚と併存疾患の関連を調査することにした。
研究は、「化学感覚研究のための国際コンソーシアム(Global Consortium for Chemosensory Research:GCCR)」のアンケートデータを用いて行われた。対象者は、SARS-CoV-2感染前と感染後の嗅覚・味覚の程度と、感染前6ヵ月の併存疾患の状態を自己評価した。併存疾患(高血圧、季節性アレルギー/花粉症、肺疾患、副鼻腔炎、糖尿病、神経疾患)によって層別化し、線線形混合モデルを用いて評価した。
最終解析には、呼吸器疾患のある2万6,468例(女性1万8,429例[69.87%]、20~60歳が90%)が組み込まれた。
主な結果は以下のとおり。
・最終解析に組み込まれた2万6,468例のうち、併存疾患があるのは1万6,016例、併存疾患がないのは1万452例であった。
・年齢、性別、地域を調整した多変量回帰分析の結果、高血圧、肺疾患、副鼻腔疾患、神経疾患の併存疾患があるCOVID-19患者では、嗅覚・味覚障害が悪化した割合が高かった(いずれもp<0.05)が、それらの回復に明らかな差はみられなかった。
・季節性アレルギー/花粉症を有するCOVID-19患者では、味覚・嗅覚障害が悪化した割合が高く、回復も遅かった(いずれもp<0.001)。
・糖尿病では、味覚・嗅覚障害の悪化にも回復にも明らかな関連はみられなかった。
(ケアネット 森 幸子)