Long COVID、軽症であれば1年以内にほぼ解消/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/01

 

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、いくつかのlong COVID(COVID-19の罹患後症状、いわゆる後遺症)のリスクが高いが、その多くは診断から1年以内に解消されており、小児は成人に比べ症状が少なく、性別は後遺症のリスクにほとんど影響していないことが、イスラエル・KI Research InstituteのBarak Mizrahi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。

イスラエルの全国的な後ろ向きコホート研究

 研究グループは、軽症SARS-CoV-2感染者における感染から1年間のlong COVIDによる臨床的な罹患後症状(後遺症)の発現状況を明らかにし、年齢や性別、変異株、ワクチン接種状況との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。

 解析には、イスラエルの全国規模の医療機関から得られた電子医療記録(EMR)が用いられた。対象は、2020年3月1日~2021年10月1日の期間に、ポリメラーゼ連鎖反応法によるSARS-CoV-2検査を受けたMaccabi Healthcare Servicesの会員191万3,234人であった。

 エビデンスに基づく70のlong COVIDアウトカムのリスクについて、年齢と性別で調整し、SARS-CoV-2変異株で層別化したうえで、未入院のSARS-CoV-2感染者(29万9,870人、年齢中央値25歳、女性50.6%)と、マッチさせた非感染者(29万9,870人、25歳、50.6%)を比較した。

 リスクの評価には、感染初期(30~180日)および後期(180~360日)におけるハザード比(HR)と、1万人当たりのリスク差が用いられた。

ブレークスルー感染例で呼吸困難のリスクが低い

 感染初期と後期の双方で、COVID-19感染との関連でリスク増加が認められたlong COVIDとして、次が挙げられた。

・嗅覚/味覚障害
初期 HR:4.59(95%信頼区間[CI]:3.63~5.80)、リスク差:19.6(95%CI:16.9~22.4)
後期 2.96(2.29~3.82)、11.0(8.5~13.6)
・認知障害
初期 1.85(1.58~2.17)、12.8(9.6~16.1)
後期 1.69(1.45~1.96)、13.3(9.4~17.3)
・呼吸困難
初期 1.79(1.68~1.90)、85.7(76.9~94.5)
後期 1.30(1.22~1.38)、35.4(26.3~44.6)
・衰弱
初期 1.78(1.69~1.88)、108.5(98.4~118.6)
後期 1.30(1.22~1.37)、50.2(39.4~61.1)
・動悸
初期 1.49(1.35~1.64)、22.1(16.8~27.4)
後期 1.16(1.05~1.27)、8.3(2.4~14.1)
・連鎖球菌扁桃炎
初期 1.18(1.09~1.28)、13.4(6.8~19.9)
後期 1.12(1.05~1.20)、16.6(7.4~25.9)
・めまい
初期 1.14(1.06~1.23)、11.4(4.7~18.1)
後期 1.17(1.09~1.26)、16.7(8.6~24.8)

 感染初期にのみリスクが上昇したlong COVIDは、呼吸器疾患(HR:2.4[95%CI:1.67~3.44]、リスク差:3.7[2.3~5.3])、抜け毛(1.75[1.59~1.93]、31.6[26.2~36.9])、胸痛(1.41[1.33~1.49]、56.3[47.0~65.7])、筋肉痛(1.24[1.15~1.35]、17.5[11.2~23.8])、咳嗽(1.09[1.04~1.14]、22.2[9.7~34.6])などであった。

 ワクチン未接種者の感染初期に、女性で抜け毛のリスク(女性のHR:2.09[95%CI:1.86~2.35]、男性のHR:0.9[0.80~1.17])が高かったことを除き、他の症状のHRは男女でほぼ同等であった。小児は成人に比べ感染初期の症状が少なく、これらの症状も後期にはほとんどが解消された。SARS-CoV-2変異株全体で、long COVIDの発現状況に一貫性が認められた。また、ワクチン接種者のうちブレークスルー感染例では、未接種者と比較して、呼吸困難(HR:1.58、95%CI:1.18~2.12)のリスクが低く、他の症状のリスクは同程度であった。

 著者は、「COVID-19感染症の世界的流行の当初からlong COVIDが危惧されてきたが、軽症の経過をたどった患者の罹患後症状は、その多くが数ヵ月間残存した後、1年以内に正常化することが確認された。これは、軽症例の大部分は重症化や長期的な慢性化には至らず、医療従事者に継続的に加わる負担は小さいことを示唆する」としている。

(医学ライター 菅野 守)