睡眠の時間や質およびその変化が抑うつ症状リスクに及ぼす縦断的な影響は、よくわかっていない。韓国・Hallym University Dongtan Sacred Heart HospitalのYoo Jin Um氏らは、睡眠の時間や質およびその変化が抑うつ症状の発症にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、検討を行った。その結果、睡眠の時間や質およびその変化は、若年成人の抑うつ症状と独立して関連しており、不十分な睡眠や睡眠の質の低下がうつ病リスクと関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月14日号掲載の報告。
ベースライン時にうつ病を発症していない韓国人成人22万5,915人(平均年齢:38.5歳)を対象に平均4.0年間のフォローアップ調査を実施した。睡眠の時間や質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票を用いた。抑うつ症状の評価には、うつ病自己評価尺度(CES-D)を用いた。フレキシブル・パラメトリック比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間[CI]を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中に抑うつ症状が認められた人は、3万104人であった。
・睡眠時間7時間の人と比較したうつ病の多変量調整HRは、以下のとおりであった。
【5時間以下】HR:1.15、95%CI:1.11~1.20
【6時間】HR:1.06、95%CI:1.03~1.09
【8時間】HR:0.99、95%CI:0.95~1.03
【9時間以上】HR:1.06、95%CI:0.98~1.14
・睡眠の質が不良な人においても、同様の傾向が認められた。
・睡眠の質が持続的に良好な人と比較し、持続的に不良な人(HR:2.13、95%CI:2.01~2.25)または低下した人(HR:1.67、95%CI:1.58~1.77)では、抑うつ症状発症リスクが高かった。
・本研究の限界として、睡眠時間の報告が自己申告によるものである点が挙げられる。
・睡眠の時間や質およびその変化は、若年成人の抑うつ症状と独立して関連しており、不十分な睡眠量や睡眠の質の低下がうつ病リスクと関連していることが示唆された。
(鷹野 敦夫)