同側乳房に2~3個の病巣を有する乳がん患者において、乳房温存手術後の全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射による5年局所再発率は3.1%であり、臨床的許容率として規定されていた8%を下回ったことが、第II相単群の前向き試験であるACOSOG Z11102(Alliance)試験で確認されたことを、米国・Mayo ClinicのJudy C. Boughey氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号掲載の報告。なお、本結果はサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表されている。
乳房温存療法(乳房温存手術+標準的放射線療法、以下BCT)は、Stage0~IIの乳がんに対する標準的な治療であるが、過去の研究においてBCTを受けた患者では局所再発率が高いことが報告されているため、同側多発乳がん(MIBC)患者では乳房切除術を受けることが推奨されている。しかし、MIBCに対するBCT後の局所再発について評価した前向き臨床試験はない。そのため、本研究は、BCTを受けたMIBC患者の転帰を評価するため、前方視的に実施された。
対象は、40歳以上の女性で、同側乳房に2~3個の腫瘍を有する乳がん患者(cN0~1)であった。乳房温存手術後に、全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射を行った。主要評価項目は、放射線療法終了後5年目の局所再発の発生率で、臨床的許容率は8%未満と規定した。
主な結果は以下のとおり。
・2012年11月~2016年8月に270例が登録され、うち204例(年齢中央値61歳[範囲:40~87歳])が評価可能であった。
・追跡期間中央値は66.4ヵ月(1.3~90.6ヵ月)で、6例に局所再発が生じた。5年目の局所再発率は3.1%(95%信頼区間:1.3~6.4)であった。
・年齢、術前の生検による病巣の数、ER/HER2発現状況、病理学的病期分類は、局所再発リスクと関連していなかった。
・探索的解析において、術前にMRIを実施していない患者(15例)の局所再発率は22.6%で、術前にMRIを実施した患者(189例)の局所再発率は1.7%であった(p=0.002)。
これらの結果より、研究グループは「本試験によって、MIBC患者に対する乳房温存手術後の全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射の5年局所再発率は許容できるほど低いことが明らかになった。同側乳房に2~3個の病巣を有する乳がん患者で、とくに術前MRI実施した患者に対するBCTは妥当な外科的選択肢である」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)