私たちに感動をもたらした「2020年東京オリンピック夏季大会」(2021年7月開催)。東京オリンピックの開催期間中、アスリート達にはどのようなけがや病気が多かったのであろう。国士館大学体育学部スポーツ医科学科の田中 秀治氏らの研究グループは、東京オリンピック夏季大会で発生したけがや病気を分析し、発表した。British Journal of Sports Medicine誌オンライン版2023年4月13日号に掲載。
本研究は、2021年7月21日~8月8日のオリンピック競技期間中の傷病の発生を分析。1万1,420人のアスリートと31万2,883人の大会関係者を後ろ向き研究で調査した。
主な結果は以下のとおり。
・アスリートの傷病の合計は567人(416人がけが、51人非熱関連疾患、100人が熱関連疾患)だった。
・大会関係者の傷病の合計は541人(255人がけが、161人非熱関連疾患、125人が熱関連疾患)だった。
・アスリート1,000人当たりの傷病者発生数は50人、病院搬送数は5.8人だった。
・マラソンと競歩は、全体として傷病発生率が最も高かった(17.9%、n=66)。
・(参加者1人当たり)負傷の発生率が最も高かった競技は、ボクシング(13.8%、n=40)、スポーツクライミング(12.5%、n=5)、スケートボード(11.3%、n=9)の順で、軽傷の発生率が最も高かった(ゴルフは除く)。
・参加者の感染症については、過去の夏季オリンピックよりも少なかった。
・アスリートの熱中症100人のうち、50人はマラソンと競歩で発生した。
・熱中症で病院に搬送されたのは6人のみで、入院を必要とした人はいなかった。
(ケアネット 稲川 進)