腎臓のリスクを上げない飲酒量は?

提供元:ケアネット

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公開日:2023/04/27

 

 アルコールと疾患に関して過去のコホート研究では、アルコール摂取とタンパク尿と糸球体濾過量(GFR)低下を特徴とする慢性腎臓病との間に相反する関連性が報告されている。ただ、大量飲酒が腎臓に及ぼす影響を評価した研究は少なく、これまで一定の見解が得られていなかった。そこで山本 陵平氏(大阪大学 キャンパスライフ健康支援・相談センター)らの研究グループは、これまでに報告された疫学研究の結果を統合し、アルコール摂取量と腎臓病リスクの関係を解析した。その結果、1日60g程度(日本酒約3合)以上のアルコール摂取はタンパク尿リスクとなることを明らかにした。Nutrients誌2023年3月25日号に掲載。

 本研究では、アルコール摂取量と腎臓病のリスクを評価した疫学研究報告の網羅的な文献検索を行い、抽出された11のコホート研究結果をメタ解析の手法を用いて統合した。

 研究対象者は1,463万4,940人。この系統的レビューでは、アルコール摂取とタンパク尿の発生率および60mL/分/1.73m2未満の低い推定GFR(eGFR)の用量依存的な関連性を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・非飲酒者と比較して、1日アルコール摂取量が12.0g以下の飲酒者ではタンパク尿の発生率が低かった(相対リスク[RR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.83~0.92)。
・非飲酒者と比較して、1日アルコール摂取量が36.1~60.0gの飲酒者ではタンパク尿の発生率が高かった(RR:1.09、95%CI:1.03~1.15)。
・アルコール摂取とタンパク尿発生のJ型カーブが示唆された。
・低eGFR発生率は、1日アルコール摂取量が12.0g未満および12.1~36.0gの飲酒者では、非飲酒者よりも低かった(12.0g未満で0.93[95%CI:0.90~0.95]、12.1~36.0gで0.82[95%CI:0.78~0.86]、36.1~60.0gで0.89[95%CI:0.77~1.03])。
・飲酒者は低eGFRのリスクが低いことが示唆された。

(ケアネット 稲川 進)