脳は睡眠中に記憶の整理などを行っていることが、近年明らかになっている。また、睡眠中には起床時の記憶が夢に登場することがあるため、夢が記憶の定着に関連しているのではないかといわれている。そこで、米国・ファーマン大学のLauren Hudachek氏らは、学習課題に関連する夢と睡眠後の記憶との関連について、システマティックレビューおよび16試験のメタ解析を実施し、夢と記憶の間には関連があることが明らかになった。また、記憶はレム睡眠よりもノンレム睡眠との関連が大きいことも示唆された。Sleep誌オンライン版2023年4月14日号の報告。
Pubmed、PsycInfo、Google Scholarより、「睡眠前に学習課題を実施し、睡眠後の記憶を検討した研究」「睡眠後の記憶向上と、夢に学習課題の内容がどの程度組み込まれているかを関連付けた研究」を検索した。その結果、16試験(効果数:45)が抽出された。これらについてメタ解析を実施し、学習課題に関係する夢と記憶の向上との関連を検討した。また、睡眠の種類(レム睡眠、ノンレム睡眠)、記憶の種類(陳述記憶[イメージや言語として想起でき、内容を陳述できる記憶]、手続き記憶[技能・習慣などの記憶]、空間記憶[空間や場所に関する認知記憶])別のサブグループ解析を実施した。関連の強さは標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を推定して評価した。
主な結果は以下のとおり。
・学習課題に関連する夢と記憶について、有意かつ強い関連が認められた(SMD=0.51、95%CI:0.28~0.74、p<0.001)。
・睡眠ポリグラフ検査を用いてレム睡眠中の夢(効果数:12)、ノンレム睡眠中の夢(効果数:10)と記憶の関連を検討した研究について解析した結果、ノンレム睡眠中の夢は記憶と有意な関連が認められたが(SMD=0.75、95%CI:0.23~1.28、p=0.010)、レム睡眠中の夢は記憶と有意な関連は認められなかった(SMD=0.32、95%CI:-0.09~0.74、p=0.116)。
・記憶の種類(陳述記憶、手続き記憶、空間記憶)にかかわらず、学習課題に関連する夢と記憶について、有意な関連が認められた(いずれもp<0.05)。
著者らは「本研究により、学習課題に関する夢を見ることが記憶の増強と関連することが示され、夢の内容が記憶の定着の指標となる可能性が示唆された。さらに、夢と記憶の関係は、ノンレム睡眠のほうがレム睡眠と比較して強い可能性も示唆された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)