若年乳がん患者の出産に関するこれまでの研究は潜在的なバイアスがあり不明な点が多い。今回、聖路加国際病院の越智 友洋氏らが傾向スコアマッチングを用いて、乳がん診断後の出産が予後に及ぼす影響を検討した結果、出産により再発や死亡リスクは増加しないことが示唆された。Breast Cancer誌2023年5月号に掲載。
本研究は、単施設での後ろ向きコホート研究で、2005~14年に乳がんと診断された45歳以下の患者を対象とし、診断後に出産した患者(出産コホート)104例と出産していない患者(非出産コホート)2,250例で無再発生存率(RFS)および全生存率(OS)を比較した。傾向スコアモデルの共変量は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、乳がん診断前の分娩回数、エストロゲン受容体およびHER2の発現状態とした。
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中央値82ヵ月で、出産コホートは非出産コホートよりRFSが有意に長かった(ハザード比[HR]:0.469[0.221~0.992]、p=0.047)が、OSには有意差はなかった(HR:0.208[0.029~1.494]、p=0.119)。
・傾向スコアマッチング後、乳がん診断後の出産はRFS(HR:0.436[0.163~1.164]、p=0.098)およびOS(HR:0.372[0.033~4.134]、p=0.402)と有意な関連はなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)