出産回数の多さや初産の年齢の高さが女性の認知症リスクと関連しているとされ、妊娠に伴う生理学的な変化への曝露と説明されてきた。しかし、社会経済学的およびライフスタイルの要因が関連しているとも考えられ、男性でも同様のパターンがみられる可能性がある。デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らは、女性の出産回数の多さや初産の年齢の高さと認知症リスクとの関連性について、男女両方に当てはまるかを検討した。その結果、子供の数や親になる年齢と認知症リスクとの関連性が男女間で同様であることから、社会経済学的およびライフスタイルの要因が認知症リスクと関連している可能性が示唆された。BMC Neurology誌2023年3月1日号の報告。
対象は、1994~2017年にデンマークで40歳以上であった女性(222万2,638人)および男性(214万1,002人)。Cox回帰を用いて、子供の数および初産の年齢と認知症リスクとの関連を男女別に評価した。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中の認知症発症は女性8万1,413人、男性5万3,568人、診断時の年齢中央値は女性83.3歳、男性80.3歳であった。
・子供が2人以上の家庭は、子供1人の家庭と比較し、男女ともに全体的な認知症リスクがわずかに低かった(ハザード比[HR]範囲:0.82~0.91、p difference men vs.women=0.07)。
・子供がいない場合の全体的な認知症リスクとの関連性は、男性と女性で統計学的な差が認められたが、その違いはわずかであった(男性のHR:1.04[95%CI:1.01~1.06]、女性のHR:0.99[95%CI:0.97~1.01]、p=0.002)。
・親になる年齢と全体的な認知症リスクとの関連性も男女間で類似していたが、40歳以上の高齢での初産の場合は例外的であった(男性のHR:1.00[95%CI:0.96~1.05]、女性のHR:0.92[95%CI:0.86~0.98]、p=0.01)。
・認知症のサブタイプと発症時期によるサブグループ解析では、いくつかの例外を除き、パターンおよび効果の大きさ(effect magnitude)は、男女間で同様であった。
・通常の妊娠による生理学的な変化よりも、ライフスタイルや社会経済学的な要因が認知症リスクと関連している可能性が高いことが示唆された。
(鷹野 敦夫)