入院前のコロナスクリーニングPCR検査、変異株流行初期に有用か/感染症学会・化学療法学会

提供元:ケアネット

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公開日:2023/05/12

 

 入院時のスクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRは、院内感染予防や全身麻酔・手術などの侵襲による患者の重症化予防に有用とされる一方、陽性率の低さや所要時間、コストなどの問題が指摘されており、新型コロナの5類感染症移行に伴い、今後の検査の緩和について議論が行われている。京都府立医科大学附属病院の山本 千恵氏らの研究チームにより予定入院前スクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRについて検討が行われ、その結果、とくに各変異株の流行初期において院内感染の予防に効果的であった可能性が示唆された。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて山本氏が発表した。

入院前コロナスクリーニングPCR検査陽性率は0.44%

 本研究では、2020年10月12日~2022年6月23日に予定入院した患者のべ1万4,754例を対象に、予定入院前5日以内に鼻咽頭拭い液によるコロナスクリーニングPCR検査を施行し、結果について診療録を参照し、後ろ向き調査を行った。発熱などの有症状者、緊急入院例、転院症例、濃厚接触者となっている者は対象から除外した。

 入院前コロナスクリーニングPCR検査について検討した主な結果は以下のとおり。

・対象者の年齢中央値は65歳(範囲0~99歳)。全期間の入院前コロナスクリーニングPCR検査陽性率は0.44%(64/1万4,574例)であった。
・PCR陽性者の年齢中央値は55歳、陰性者は65歳であり、陽性者のほうが有意に低値であった。
・PCR陽性率の推移をみると、従来株流行期(2020年10月~2021年3月)では0.28%、アルファ株流行期(2021年3~7月)では0.16%、デルタ株流行期(2021年7~12月)では0.21%、オミクロン株流行期(2021年12月~2022年6月)では0.90%となり、オミクロン株流行期が最も高値であった。
・PCR陽性者のCt値の分布をみると、いずれの株も流行の初期ではCt値が35未満(急性期感染を示唆)の比率が多く、流行後期になるとCt値が35以上の比率が増加した。
・PCR陽性者のうち、入院時コロナPCR検査施行前にCOVID-19罹患歴がある既感染者が50%(32/64例)を占めた。既感染者の発症または診断から入院時のRT PCR検査を施行するまでの日数の中央値は29日(範囲10~105日)であった。
・濃厚接触者はPCR検査の対象外としているが、罹患歴のない32例のうち、検査後に濃厚接触者であることが判明したPCR陽性者が21.9%(7/32例)存在した。

 山本氏は本結果について、「流行状況によりPCR陽性率に変動が認められ、とくに各変異株の流行初期において、院内感染予防に寄与していた可能性が示唆された。さらにCOVID-19既感染者かつ再感染が否定的な患者において入院前コロナスクリーニングPCR検査は不要である可能性があり、接触歴の確認は引き続き重要であると考えられる」とまとめた。

(ケアネット 古賀 公子)