今後の感染症流行に備え、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を設立するための法律が、5月31日の参議院本会議で可決、成立した。米国疾病管理予防センター(CDC)をモデルとして、2025年度に国立健康危機管理研究機構が創設される予定。感染症その他の疾患に関し、調査研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある感染症の発生および蔓延時において、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し科学的知見を提供できる体制の強化を図る。
国立健康危機管理研究機構が国立国際医療研究センターの業務を引き継ぐ
新たに設立される国立健康危機管理研究機構は特殊法人となり、理事長・監事は厚生労働大臣が任命し、副理事長・理事は、大臣の認可を得て、理事長が任命する。厚生労働大臣が機構に対する広範な監督権限を持つことで、パンデミック時に政府対策本部等の方針に従い、病原性の高い病原体の検体採取、入院治療等を迅速・柔軟・確実に行えるようにする。中期目標(6年)を大臣が策定、機構はこれに基づく中期計画を策定(大臣認可)する。大臣は、毎年度、業務の実績評価を行う。
なお、国立国際医療研究センターでは、現在、国の医療政策として実施すべき医療として、エイズ、肝炎等に関する医療等について、全国均てん化、国際医療協力の拠点となるための業務や、一部の高度先進医療や難病ゲノム医療の研究開発などを担っている。国立国際医療研究センターの業務を国立健康危機管理研究機構にすべて引き継げるよう規定される予定。
国立健康危機管理研究機構法の施行に伴い、感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)その他関係法律について、規定の整備を行うための「国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」も可決された。
国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の主な概要は以下のとおり。
1)国立感染症研究所が現に行っている事務等の委託【感染症法】
現在、国立感染症研究所の職員が国の職員として感染症法に基づき行っている事務等を、機構に行わせるため、感染症法を改正し、機構に対する厚生労働大臣の事務の委任規定および権限の委任規定を設ける。
2)政府対策本部への参加及び意見聴取【インフル特措法】
機構が、政府の新型インフルエンザ等対策本部の会議において科学的知見について意見を述べることができるよう、機構の位置づけ等について所要の規定の整備を行う。
3)「地方衛生研究所等」との連携【地域保健法】
地域保健法において、地域保健法第26条に規定する、地域における専門的な調査研究・試験検査等のために必要な体制を担う「地方衛生研究所等」の試験検査や調査分析機能の強化を図るため、地方衛生研究所等と機構との情報提供および人材育成等における連携に係る規定を整備する。
(ケアネット 古賀 公子)