薬物療法抵抗性ではないde novo stageIV乳がんに対して、薬物療法単独に比べて、原発巣切除により全生存期間(OS)を改善するかどうかを検討したわが国の第III相試験(JCOG1017)の結果、OSに有意差が認められなかった。一方、原発巣切除群は、局所コントロールが良好であり、また閉経前や単臓器転移ではOSが改善される可能性が示された。岡山大学の枝園 忠彦氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。
原発巣切除がde novo StageIV乳がんの生存期間を改善する可能性については、Tata Memorial Hospital、MF07-01試験、ABCSG28試験、ECOG2108試験といった前向き研究で検討されているが、いまだ議論の余地がある。JCOG1017試験では、de novo StageIV乳がんにおいて臨床的サブタイプに基づき、初期薬物療法後の原発巣切除の有無による予後を比較した。
・対象:de novo StageIV乳がん患者(1次登録)のうち、初期薬物療法で病勢進行(PD)と判定されなかった患者(2次登録)
・A群:薬物療法単独
・B群:原発巣切除術+薬物療法
・評価項目:
[主要評価項目]OS
[副次評価項目]遠隔転移無増悪割合、無局所再発生存期間(LRFS)、無原発巣切除生存期間、局所潰瘍形成・局所出血発生率、重篤な有害事象
主な結果は以下のとおり。
・2011年11月5日~2018年5月31日に1次登録された570例のうち、初期薬物療法後に2次登録適格条件を満たした407例をA群(205例)とB群(202例)に無作為に割り付けた。
・OSには有意差がみられなかった(ハザード比[HR]:0.857、95%信頼区間[CI]:0.686~1.072、p=0.3129)。OS中央値はA群68.7ヵ月、B群74.9ヵ月であった。
・LRFSは有意に延長した(HR:0.415、95%CI:0.327~0.527、p<0.0001)。LRFS中央値はA群19.6ヵ月、B群62.9ヵ月であった。
・OSのサブグループ解析では、エストロゲン受容体陽性、閉経前、単臓器転移の患者で原発巣切除によりOSが改善する可能性が示された。
枝園氏は「サブグループ解析の結果から、閉経前女性や転移臓器が少ない患者についてはさらなるトランスレーショナルリサーチや無作為化試験で、原発巣切除の効果が検討されるべき」とし、「原発巣切除はすべてのde novo StageIV乳がん患者に推奨されるものではないが、転移臓器数が少ない場合は治療選択肢となる可能性がある」と結論した。
(ケアネット 金沢 浩子)