Moderna(米国)とMerck(米国とカナダ以外ではMSD)は、2023年6月5日付のプレスリリースで、切除された高リスク悪性黒色腫患者に対する個別化がんワクチンmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させたと発表。本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告された。
なお、本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)については、2022年12月、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用治療で、ペムブロリズマブ単独と比較し再発または死亡のリスクが44%減少した、と発表されている。
試験概要と結果は以下のとおり。
無作為化非盲検第IIb相試験であるKEYNOTE-942試験には、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157[1mg]を合計9回筋肉内投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に、2:1で割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目はRFSで、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間(DMFS)と安全性である。
本研究の主要な副次評価項目であるDMFSについて、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させた(ハザード比[HR]:0.347、95%信頼区間[CI]:0.145~0.828、片側検定のp=0.0063)。
mRNA-4157/V940で観察された有害事象は、第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療に関連した重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では25%、ペムブロリズマブ単独群では18%で認められた。すべてのグレードにおける主な有害事象は、疲労(60.6%)、注射部位疼痛(55.8%)、悪寒(50.0%)であった。
これに対し、Modernaの上級副社長兼がん治療開発責任者のKyle Holen氏は「遠隔転移や遠隔再発を来すと予後不良である。これらのデータは、ネオアンチゲン療法の可能性を広げる結果となった。他のがん種に対しても期待できるだろう」と述べた。
さらにMerckの上級副社長兼グローバル臨床開発担当のEric H. Rubin氏は「これらDMFSの結果は以前に第IIb相試験のRFSで観察されたデータに基づいており、今年後半にModernaと協力して第III相試験を開始することを楽しみにしている」と展望を語った。
(ケアネット 寺井 宏太)