これまで、炭水化物や脂質の摂取量と死亡リスクの関連を検討した研究において、一貫した結果が得られていない。そこで、田村 高志氏(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野 講師)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)に参加した8万1,333人を対象として、炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した。その結果、日本人は男性では炭水化物の摂取量が少ないと死亡リスクが高くなり、女性では炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高くなる傾向がみられた。本研究結果は、The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月2日号に掲載された。
日本人の炭水化物摂取、男性は摂取量が少ないと死亡リスクが有意に高い
35~69歳の男性3万4,893人、女性4万6,440人(それぞれBMI値[平均値]23.7、22.2)をベースライン時(2004~14年)から2017年末または2018年末まで追跡した。食事頻度質問票を用いて炭水化物、脂質、総エネルギー摂取量を推定した。総エネルギー摂取量に占める炭水化物、脂質の割合(炭水化物エネルギー比率、脂質エネルギー比率)別に死亡リスクを評価した。リスク評価において、多変量解析により調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。
日本人の炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した主な結果は以下のとおり。
・追跡期間(平均8.9年)中に、2,783人の死亡が確認された(男性1,838人、女性945人)。
・男性では、炭水化物エネルギー比率が40%未満の群は、50%以上55%未満の群と比較して全死亡リスクが有意に高く(aHR:1.59、95%CI:1.19~2.12)、炭水化物エネルギー比率が低いと全死亡リスクが高くなる傾向がみられた(p for trend=0.002)。
・追跡期間5年以上の女性では、炭水化物エネルギー比率が65%以上の群は、50%以上55%未満の群と比較して全死亡リスクが高い傾向にあり(HR:1.71、95%CI:0.93~3.13)、炭水化物エネルギー比率が高いと全死亡リスクが高くなる傾向がみられた(p for trend=0.005)。
・男性では、脂質エネルギー比率が35%以上の群は、20%以上25%未満の群と比較してがん死亡リスクが高かった(HR:1.79、95%CI:1.11~2.90)。
・女性では、脂質エネルギー比率と全死亡リスク、がん死亡リスクに逆相関の傾向がみられた(それぞれp for trend=0.054、0.058)。
著者らは、本研究結果について「男性では炭水化物の摂取量が少ない場合、女性では炭水化物の摂取量が多い場合、死亡リスクが高くなる傾向がみられた。炭水化物の摂取量が比較的多い日本人成人では、脂質の摂取量が多い女性の死亡リスクが低下する可能性がある」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)