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境界性パーソナリティ障害の自殺リスクに対する薬物療法の比較

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/30

 

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者では、自殺行動が臨床上の重大な懸念事項となるが、自殺リスクの低下に有効な薬物療法は依然として明らかになっていない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、スウェーデンのBPD患者における自殺企図または自殺既遂の予防に対する、さまざまな薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、BPD患者の自殺行動のリスク低下と関連が認められた唯一の薬物療法は、注意欠如・多動症(ADHD)治療薬であることが示され、逆に、ベンゾジアゼピンの使用は自殺リスク上昇との関連が示唆された。著者らは、BPD患者において、ベンゾジアゼピンは注意して使用する必要があると報告している。JAMA Network Open誌2023年6月1日号の報告。

 対象は、2006~21年にスウェーデンの全国レジストリデータベースに登録された16~65歳のBPD患者。データの分析は2022年9月~12月に行った。選択バイアスを排除するため、個別(within-individual)デザインを用いた。初発症状バイアスを調整するため、薬物治療開始から最初の1ヵ月間または2ヵ月間を分析から除外し、感度分析を行った。主要アウトカムは自殺企図または自殺既遂で、ハザード比(HR)を算出し評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・分析には、BPD患者2万2,601例(男性:3,540例[15.7%]、平均年齢:29.2±9.9歳)が含まれた。
・16年のフォローアップ期間(平均:6.9±5.1年)に、自殺企図で入院した患者は8,513例、自殺既遂が確認された患者は316例であった。
・ADHD治療薬による薬物療法は、同薬物療法を行わなかった場合と比較し、自殺企図または自殺既遂のリスク低下と有意な関連が認められた(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.95、FDR補正p=0.001)。
・気分安定薬による薬物療法は、主要アウトカムと有意な関連が認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.87~1.08、FDR補正p=0.99)。
・自殺企図または自殺既遂のリスク上昇と関連していた薬物療法は、抗うつ薬(HR:1.38、95%CI:1.25~1.53、FDR補正p<0.001)、抗精神病薬(HR:1.18、95%CI:1.07~1.30、FDR補正p<0.001)による治療であった。
・調査された薬剤のうち、ベンゾジアゼピンによる治療は、自殺企図または自殺既遂のリスクが最も高かった(HR:1.61、95%CI:1.45~1.78、FDR補正p<0.001)。
・これらの結果は、潜在的な初発症状バイアスで調整した場合でも同様であった。

(鷹野 敦夫)